研究概要 |
自動車からの廃熱を利用して熱電発電を行ううえで、熱電材料によって最高性能を発揮できる温度領域が限られるという問題がある。このことは、従来、一つの素子には1種類ずつのnおよびp型熱電材料のみが使用されてきたことによるものである。そこで、新たな熱電発電のブレークスルーを実現するために、本研究ではFe_2VA1系ホイスラー化合物熱電材料を取り上げ、一つの素子に2種類以上のnおよびp型熱電材料を組み合わせたセグメント型や組成傾斜型熱電素子の開発を試みることで,広範囲の温度領域で効率的な熱電発電性能を実現することを目的とする。 初年度は、主に任意の温度に発電効率のピークを有するp型の熱電材料として、非化学量論組成Fe_2V_<1+x>Al_<1-x>(x=0~-0.20)の試料の作製を試みた。X線回折測定から、すべての試料はホイスラー化合物の単相であることを確認した。しかしながら、|x|>0.12の試料は非常に脆く、機械的強度の低下が見受けられた。光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡による組織観察では多数のクラックが観察され、脆性との関係が示唆される。x=0~0.12の試料について熱電特性を測定したところ、Al組成比の増大とともにゼーベック係数のピーク温度は高温側にシフトしており,x=-0.12では600K付近にピークを形成することを確認した。また,ピーク温度でのゼーベック係数は60~100μV/Kとなる。したがって,Al組成比を変化させることにより、任意の温度で高い熱電特性を持つp型材料を設計できることがわかった。
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