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2012 年度 実績報告書

野生チンパンジーの集団における離・散を内包した社会構造と社会的境界の生成プロセス

研究課題

研究課題/領域番号 12J00004
研究機関京都大学

研究代表者

花村 俊吉  京都大学, 野生動物研究センター, 特別研究員(PD)

キーワード野生チンパンジー / 集団 / タンザニア / 社会構造 / 共存機構 / 社会観 / 人間と動物の境界 / 霊長類
研究概要

野生チンパンジーは、集団を構成するメンバーが離合集散し、メスが集団間を移出入する。本研究の目的は、そうしたチンパンジーの離・散を内包した集団の社会構造の生成機序や個体間の共存機構を、主に移入メスの立場から考察することである。本年度は、タンザニアのマハレ山塊国立公園にて、チンパンジーのM集団を対象に2度の予備的な野外調査をおこなった。その予備調査の記録とともに、これまで同じ調査地で収集してきた移入メスの在住個体との相互行為の記録を分析した結果を国際学会で発表し、以下のような本研究の意義や重要性を議論した。これまで、チンパンジーの移入メスは、在住メスから受ける敵対的交渉を、交尾を通して親和的関係を形成した在住オスからの援助を受けて抑制・回避すると言われてきた。しかし、在住オスが移入メスを攻撃することもあり、その際、在住メスが移入メスを援助することがあった。また、移入メスはしばしば特定の在住メスを追随することがあった。移入メスの在住個体との共存や集中行動圏(各メスがそれぞれ頻繁に利用する土地)の形成、ひいてはチンパンジー特有の離・散を内包した社会構造の生成機序に、メスどうしの社会関係が影響している可能性が示唆された。
そのほか、チンパンジーM集団の長距離音声を介した相互行為の慣習に着目して分析した結果をまとめ、和文論文集の一章として出版した。複数の研究者とともに、長期的に蓄積してきたチンパンジーM集団の遊動ルートの記録をまとめ、英文学術雑誌に共著論文として投稿・出版した。また、フィールドでの観察者(私)と対象動物(ニホンザルやチンパンジー)との相互行為に着目して私自身のフィールノートのテクスト分析をおこない、人間と動物の境界がそのつど創り出されたり揺らいだりする過程や、人間が霊長類の社会構造や社会的境界を抽出する際に霊長類社会に投影する社会観について、国内学会で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の遂行には、野生チンパンジーを対象とした野外調査が必須である。初年度にあたる本年度は、次年度以降も調査を継続する予定の調査地の維持・管理に着手するとともに、調査対象集団のチンパンジーの個体識別、観察対象個体の選択、行動や遊動に関して具体的に収集していく記録の検討など、当初の計画通りの予備的な調査をおこなうことができた。

今後の研究の推進方策

本年度におこなった予備的調査の結果を踏まえ、タンザニアの野生チンパンジーを対象にした野外調査を継続するとともに、これまでに収集してきたチンパンジーやニホンザルの相互行為や遊動の記録を分析・考察し、集団の社会構造や共存機構についての研究成果を発表していく必要がある。また、ヒト以外の霊長類の集団と人間の集団との差異や連続性を比較検討するために、関連文献の収集にも力を入れる必要がある。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Ranging behavior of Mahale chimpanzees: a 16 year study2013

    • 著者名/発表者名
      Nakamura M, Corp N, Fujimoto M, Fujita S. Hanamura S, Hayaki H, Hosaka K, Huffman MA, Inaba A, Inoue E, Itoh N, Kutsukake N, Kiyono-Fuse M, Kooriyama T, Marchant LF, Matsuaoto-Oda A, Matsusaka T, McGrew WC, Mitani JC, Nishie H, Norikoshi K, Sakamaki T, Shimada M, Turner LA, Wakibara JV, Zamma K
    • 雑誌名

      Primates

      巻: 54 ページ: 171-182

    • DOI

      10.1007/s10329-012-0337-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] イルンビの森にゾウを追ってパート(4)-ムジェゲの知恵とゾウの呪い2012

    • 著者名/発表者名
      花村俊吉
    • 雑誌名

      マハレ珍聞

      ページ: 3-4

  • [雑誌論文] カトゥンビ村の小学校へ2012

    • 著者名/発表者名
      花村俊吉
    • 雑誌名

      マハレ珍聞

      巻: 19 ページ: 4

  • [学会発表] Society where they can stay apart from each other : focusing on female immigration and interactions through long-distance pant-hoots in chimpanzees at Mahale, Tanzania2012

    • 著者名/発表者名
      Hanamura S
    • 学会等名
      The XXIV Congress of the International Primatological Society
    • 発表場所
      カンクンコンベンションセンター(メキシコ)
    • 年月日
      2012-08-16
  • [学会発表] 嵐山のニホンザル社会の理解を試みる私のエスノグラフィー-観察現場で揺らぐ「人間/サル」「専門家/素人」の境界と人間が表象するサル社会の境界2012

    • 著者名/発表者名
      花村俊吉
    • 学会等名
      文化人類学会第46回研究大会
    • 発表場所
      広島大学(広島県)
    • 年月日
      2012-06-23
  • [備考]

    • URL

      http://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/members/hanamura.html

URL: 

公開日: 2014-07-16  

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