研究概要 |
β2アドレナリン受容体遺伝子(ADRB2)の上流領域に存在し、肥満(BMI>27kg/m2)と最も強い関連を示した単一塩基多型(SNP)rs34623097-Aと、オセアニア集団の血清脂質値(中性脂肪(TG)、総コレステロール(T-CHO)、HDLコレステロール、LDLコレステロール)との関連を評価した。ポリネシア地域のトンガ人集団において、rs34623097-Aが血清TG値と有意な関連を示し(P-value=0.037)、rs34623097-Aを1コピーもつごとに血清TGが0.791mmol/L増加することが明らかとなった(Naka l, et al., 2013)。また、ADRB2が受容体として働くカテコラミン誘導脂質分解経路に関わる分子をコードする遺伝子(LIPE, PLIN)と、中性脂肪分解に関わる、リポ蛋白リパーゼをコードする遺伝子(LPL)、脂肪滴の肥大化に関わる遺伝子(CIDLEA, CIDEC)の多型と、肥満、血清中脂質値との関連を評価した。その結果、LPLのイントロンに存在するSNPが肥満と(P-value=0.015)、3'非翻訳領域に存在するSNPが肥満(P-value=0.016)、HDLコレステロール値と有意な関連を示した(P-value=0.037)。当該SNPはLPL遺伝子の発現量低下に関連する機能的SNPであることが報告されている(Richardson K, et al., 2013)。他の遺伝子多型と肥満との有意な関連は見いだせなかったことからも、カテコラミン誘導脂質分解経路のADRB2、および中性脂肪分解に関わるLPLが、オセアニア集団の肥満に大きな影響を及ぼす遺伝因子である可能性が考えられた。
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