研究課題/領域番号 |
12J00032
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中畑 雅樹 大阪大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | フェロセン / シクロデキストリン / ホスト-ゲスト相互作用 / イオン性相互作用 / ヒドロゲル / 自己組織化 / 分子認識 / 配列制御 |
研究概要 |
本年度は、当初の研究実施計画に挙げた2つの課題「(1)分子認識のマクロスケールでの可視化と外部刺激による制御」「(2)超分子導入ヒドロゲルを用いた刺激伸縮性材料の構築」のうち特に(1)について以下の研究を実施した。 近年、さまざまな外部刺激に応答してその物性を制御できる材料が注目を集めている。ここにホスト-ゲスト相互作用やイオン性相互作用などの超分子科学的アプローチを取り入れることで、生体系を模した、あるいはそれを超えるような高度な機能性材料の構築が期待される。本年度の研究では、鍵化合物としてフェロセン(Fc)を選択した。Fcは、安定な還元状態ではβ-シクロデキストリン(βCD)とのホスト-ゲスト相互作用、酸化されたフェロセニウムカチオン(Fc^+)状態ではスチレンスルホン酸ナトリウム(SSNa)に代表されるような種々のアニオン性分子とのイオン性相互作用が期待される。これらの相互作用部位をポリアクリルアミドゲルの側鎖に導入し、機能性を付与したヒドロゲル(Fc gel、βCD gel、SSNa gel)とした。Fc gelとβCD gelとを水中で混合撹拌すると、選択的に集積体を形成した。一方で、Fcを酸化状態としたFc^+ gelはβCD gelと集積体を形成しなかった。また、Fc gelとSSNa gelは集積体を形成せず、Fc^+ gelとSSNa gelは選択的に集積体を形成した。このように、Fcの酸化状態によって異なる相互作用(ホスト-ゲスト相互作用、イオン性相互作用)を使い分け、接着相手のゲルをスイッチングできることが分かった。さらに、直方体型のFc gelの片側のみを酸化し、FcとFc^+とを混在させたゲルはβCD gel、SSNa gelのどちらとも接着し、二つの相互作用を用いて三つの物体を配列制御して集合させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果(課題(1))に関して、「Redox-Responsive Macroscopic GelAssembly Based on Discrete Dual Interactions」というタイトルで論文を執筆し、Angewandte Chemie International Edition誌に掲載予定である。また、現在進行中の内容に関して特許を一件出願することができた。その他にも、様々な可逆的相互作用(ボロン酸エステル形成、核酸塩基対間の水素結合)を介してマクロスケールで物体を接着する研究の成果が出揃いつつあり、前者に関しては論文投稿中、後者に関しては論文執筆中である。全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性としては、研究課題(1)のうち論文として発表できていないものに関して引き続きデータの補完等を進めていく。また、研究計画時には考慮していなかった新たな相互作用(電荷移動相互作用等)を用いて、物体表面間の相互作用に関与する分子数等の定量的な評価を行っていく。これにより、「マクロスケールでの分子認識」をより一般的な概念へと昇華させることができると考えられる。研究課題(2)については、挿し違いダイマーを用いた系に関してモデル分子の合成、ゲルへの導入、刺激応答性の調査を順次行っていく予定である。
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