本年度は、当初の研究実施計画に挙げた2つの課題「(1)分子認識のマクロスケールでの可視化と外部刺激による制御」「(2)超分子導入ヒドロゲルを用いた刺激伸縮性材料の構築」のうち特に(1)について以下の研究を実施した。 近年、さまざまな外部刺激に応答してその物性を制御できる材料が注目を集めている。ここにホスト-ゲスト相互作用やイオン性相互作用、水素結合などの超分子科学的アプローチを取り入れることで、生体系を模した、あるいはそれを超えるような高度な機能性材料の構築が期待される。本年度の研究では、分子認識部位としてオリゴヌクレオチドを側鎖に修飾した高分子ヒドロゲルや核酸塩基を側鎖に修飾した高分子オルガノゲルを調製し、それらの間にはたらく接着を評価した。それぞれの相補的な分子認識部位を修飾したゲル同士が、適切な環境下で接着することを見出した。接着の強度を定量的に評価したところ、分子認識部位の導入量が多いほど接着力も増大した。また、認識を競争的に阻害する分子を接着面に添加することで接着が阻害されたことから、核酸塩基間の相補的な相互作用によってゲルが接着したことが示された。水素結合を巧みに活用することにより、水中から有機溶媒中という幅広い環境下においてマクロなスケールで「もの」と「もの」とを接着することに成功した。
|