研究課題/領域番号 |
12J00036
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
茅根 由佳 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 民主化 / 経済成長 / 格差問題 / 政治的自由化 / 都市開発 / 上水道インフラ事業 / 民営化政策 / 地方分権 |
研究概要 |
本研究では、格差の解消なく経済成長を続ける民主化後のインドネシアの首都ジャカルタ特別州における開発と政治のメカニズムを明らかにすることを目的とした。インドネシアは, スハルト権威主義体制崩壊後、極めてラディカルに政治的自由化、地方分権化が起き、権力は分散され、今では東南アジアで「最も民主的」な国家とされている。しかし、その首都ジャカルタの政治においては貧困層が政治参加から排除されており、民主的インドネシアのイメージからかけ離れたパラドックスが起きている。本研究は、そのパラドックスがいかなる政治的、経済的背景から発生したものか、格差を助長、固定化してきた要因は何か、といった問いの解明を目指すものである。 本年度は、インドネシアの首都開発行政、とくに上水道インフラ事業の民営化政策の事例に焦点を当てて、より詳細な現状の事実確認と格差問題に関する状況把握を目的に、8月から10月、及び1月から3月の合計約4ヶ月間、ジャカルタ特別州における情報収集及び聞き取り調査を行った。さらに水道事業政策と並べて資源事業から開発政策について考察するため、比較として石油ガス政策に関する調査も開始した。具体的には、まず1997年の政治変動期以降の都市開発、行政に関連する資料を収集した。さらに、2012年ジャカルタ特別州知事選挙における、各候補者の政策マニフェスト、世論に表れる貧困や格差問題への認識に関する情報を収集することを目的に、聞き取り調査(行政機関、都市貧困問題に取り組むNGO、メディア、調査研究機関、政治家、企業)及び、関連資料の収集を行った。これらの研究結果は「インドネシアの首都ジャカルタ水道事業と民営化政策をめぐる攻防-ポスト・スハルト期の政治経済構造の継続と変容-」というタイトルで投稿論文として発表した。また、石油ガス政策についても12月には東南アジア学会での口頭発表も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の成果は、本特別研究員のテーマに沿った査読付き論文が掲載されたことである。更に、複数の現地調査と資料分析を通じて、より広い視点から開発行政とビジネスに関する分析を進め、石油ガス政策の政治過程を詳細に分析し始めており、この成果は東南アジア学会での発表につながった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において水道事業政策を事例として首都開発とビジネスに関する研究成果を論文にまとめることができたので、当初の研究計画より早く進み、次年度提出予定の博士論文で比較考察の対象とする石油事業の開発に関する研究を行っていく。現状においては現地調査と先行研究の整理が進んでおり、このまま順調に調査研究が進めば、平成27年度に投稿論文にまとめる予定である。そして本年度内に博士論文を書き上げることを目指す。
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