研究課題
本研究の目的は、惑星磁気圏における高エネルギー粒子(10MeV以上)の主要供給源の1つであると示唆されている、木星極域高エネルギー粒子加速について、その物理過程やエネルギー源を解明することである。これを他の惑星の極域粒子加速と比較し、惑星磁気圏(特に自転駆動磁気圏)に普遍的な粒子加速過程として理解することを最終目的としている。本年度は主に以下の1と2の一部を実施した。(1)木星探査機の豊富な電波観測データに基づき、木星高エネルギー粒子加速と、それに伴う電波バースト(QPバースト)やオーロラ現象の観測的特性を明らかにする。(2)他の惑星磁気圏の観測と比較しつつ、観測で明らかになった電波やオーロラの特性を基に、粒子加速のシナリオを考察する。土星探査機カッシーニが惑星間空間において得た、木星電波の遠隔観測データにもとづき、QPバーストの偏波特性や出現特性を調査した。その結果、QPバーストが特定の電波励起モードにより励起されることが明らかになった。この観測されたモードの情報は、極域で加速された高エネルギー粒子と、それによって励起されうるQPバーストの相互作用過程を制約する重要な情報である。またこの観測から、ある特定の自転位相において頻繁にQPバーストが出現することが分かった。この電波特性は、極域粒子加速とQPバーストが、惑星磁気圏の自転によってその出現を規定されていることを示している。これは極域粒子加速のエネルギー源も、磁気圏の自転に同期して変動していることを示唆している。これらの観測結果を元に、QPバーストの励起過程に関して、シナリオを提案した。この結果は論文にまとめられ、Journal of Geophysical Research(米国地球物理学会誌)に受理、出版された。
2: おおむね順調に進展している
本研究は数値実験と自転駆動磁気圏の電波等のプラズマ・波動観測データを融合することで、地球では実現できない、自転駆動磁気圏における強力な粒子加速現象を解き明かすのが目的である。その第一段階として、数値実験の準備となる粒子加速の観測的制約を整理できた。数値実験に向けた基本的な観測制約が整理出来たため、概ね順調と評価した。
初年度に行った観測制約の調査の結果、木星極域の粒子加速現象の発生位置や励起機構等を電波観測データから制約することが出来た。これは数値実験の重要な観測的制約になりうる。しかしながら、粒子加速現象に対応する十分な信号強度を持った電波現象のイベント数が当初の想定よりも少なく、粒子加速のエネルギー源考察に必須である太陽風応答等のダイナミクスを観測的に解明しきれていない。そのため、今後更に観測的制約を増やす必要性がある。そのため、既存の電波データに加え、宇宙望遠鏡による紫外域やX線帯域におけるオーロラの長期連続モニタリング観測などを新規に導入し、極域粒子加速の時間変動に関して、さらに観測的調査を実施する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Advances in Space Research
巻: Volume 51 ページ: 1605-1621
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Journal of Geophysical Research
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http://sprg.isas.jaxa.jp/researchTeam/spacePlasma/results/1212_kimura.html