研究課題
木星と同じ自転駆動磁気圏の特性を有する土星において、極域粒子加速に伴う電波の長期変動を解析した。電波、磁気圏、太陽風、季節依存の変動を分離しながら極域粒子加速の制御要因を考察した。その結果、オーロラの消費エネルギーが、太陽紫外線の弱い冬半球と強い夏半球の間で100倍の差が発見された。これは、極域に入射する太陽紫外線の季節変動により、電離圏電気伝導度が変化し、磁気圏-電離圏結合電流が、夏冬半球間で異なる強度になっていることを示す。惑星紫外分光観測衛星「ひさき」衛星が中心となった、木星観測国際協調観測が2014年1月に実施された。この協調観測では、「ひさき」衛星、ハッブルを用いて、木星オーロラと磁気圏プラズマガスを紫外線で連続監視した。本研究は、「ひさき」とハッブルの観測データの解析を開始した。初期結果として、太陽風が極端に静穏な時期に、定常放射と同等以上のエネルギーの過渡的オーロラ放射が発見された。先行研究では、過渡的粒子加速は太陽風駆動であるという知見が一般的だった。しかし、本研究の結果はその知見を覆し、自転駆動による過渡的粒子加速の存在を示唆する。
3: やや遅れている
本研究では既存の電波観測データによる,木星極域粒子加速の解析を実施してきたが、当初想定していたよりも信号強度が弱く、時空間分解能が不足していた。そのため、数値実験に足る観測制約(高精度の加速位置、広がり、時間変動)を取得出来なかった。そこで、高エネルギー粒子加速に伴う紫外線、X線放射の解析を実施している。当初は、平成25年12月の国際学会において成果発表を行う予定であった。しかし、11月に、共同研究者から、成果発表を行うには多波長の観測による木星粒子加速の長期監視が不可欠である旨、指摘を受けた。その為、より長期の観測データを取得したうえでそれらを他観測と比較しながら追加解析や海外機関でのヒアリングをする必要が出てきた。その分の研究計画を追加する必要が有るため、本年度はやや遅れた達成度となった。
チャンドラX線望遠鏡-XMMニュートン-「ひさき」の協調観測提案が採択された。本研究員は、共同提案者として提案書の科学的意義を執筆した。チャンドラ、XMMニュートン、「ひさき」の3つの宇宙望遠鏡を使用して、木星極域の粒子加速と、その種となる磁気圏プラズマ加熱を連続監視する。これは2014年4月中旬に実施予定である。「ひさき」-ハッブル、「ひさき」-X線の協調観測計画の概要については、本研究員が主著者として学会発表済みである。今後は、主にX線と紫外線の観測に注目し、他波長観測に基づいた粒子加速の観測制約の取得をしていく予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
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