研究課題
本年度は、成長ホルモン(GH)促進因子であるグレリンの分泌を中鎖脂肪酸によって増加せ、乳生産をコントロールできるかについて検討するため、搾乳牛11頭を用いて泌乳試験を行った。1.5%中鎖脂肪酸給与(MCFA)区と対照(CON)区を設け、1期14日間の反転法で実施した。乳量と摂取量の測定および血液と胃汁の採取を行い、これまでの解析でみられる傾向としては、MCFA区はCON区と比較して血漿グレリンおよびグルカゴン濃度が高く、血漿GHおよびインスリン濃度に差は認められないが、採食に伴う血糖値の減少が大きかった。MCFA区におけるT-CHO、TGおよびNEFA濃度の増加やケトン体濃度の増加は認められなかった。ルーメン液性状については、MCFA区において総VFA濃度が低下する傾向があった。乳量および乳質は処理区間で有意な差は認められなかったが、増体量はMCFA区において増加した。MCFA区では脂肪酸を摂取したにも関わらず、血漿NEFA濃度やケトン体濃度が増加しなかったのは、MCFA摂取乳牛の体内の代謝状況が同化にシフトしたために、体脂肪動員に由来して血中に増加するNEFAや肝臓から合成されるケトン大量が減少し、結果として血中濃度に差が表れなかったのかもしれない。本実験ではグレリンの増加に対してGH分泌が応答せず、それに付随しておこる体組織の動員や体内で利用可能な栄養素の優先的な乳腺への分配が起こらなかったと考察された。目的とするホルモンの人為的な操作によって、乳量のコントロールを行うことはできなかったが、本実験のような血中マーカー(内分泌系と代謝物)の相互作用、さらには生産性との関係性についてアプローチした研究データは、高度化する乳牛の飼養管理技術に応用させることができる可能性を見出した。
(抄録なし)
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Domestic Animal Endocrinology
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家畜栄養生理研究会報
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