研究課題/領域番号 |
12J00079
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
古澤 峻 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員PD
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キーワード | 状態方程式 / ニュートリノ / 軽元素 / 超新星爆発 |
研究概要 |
重力崩壊型超新星爆発は大質量星が化学進化の果てに起こす人爆発である。本研究課題は、超新星爆発のメカニズム解明に不可欠な、ニュートリノ輸送や核物質の状態方程式の計算に主眼をおいている。本年度の研究成果は、「軽元素が超新星爆発に与える影響の解明」と「多核種を含む高温高密度な状態方程式テーブルの作製」である。 本研究課題のシミュレーションで用いる状態方程式は、多核種の存在比を含む点が、既存の状態方程式との大きな違いである。特に軽元素はこれまでヘリウム4のみが含まれていたが、申請者の作製した状態方程式には、重水素、三重水素、ヘリウム3など、全ての軽元素が含まれている。そこでその新しい状態方程式を用いて、超新星爆発の衝撃波の再加熱時における、これまで無視されてきた軽元素の影響を調べた。具体的には軽元素によるニュートリノ加熱反応を含む2次元軸対称の超新星爆発シミュレーションを行った。結果として軽元素、特に重水素の加熱を考慮した場合に、大きく衝撃波の時間発展が異なることを示した。また、衝撃波の形が歪む段階で、局所的に軽元素が豊富に存在する部分が形成され、衝撃波加熱に影響が出ることが分かった。 また申請者の状態方程式を、誰でも使える形としてテーブル化し、他の超新星爆発シミュレーションを行う研究者に譲渡した。この状態方程式テーブルは、これまでの状態状態方程式では考慮できなかった原子核の組成の情報を正確に含む。原子核の弱相互作用が重要な役割を担う超新星爆発シミュレーションにおいて、重要なインプット物理になると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
困難が続いた状態方程式テーブルの作製が終わったが、本研究課題の最終目標であった近似なしの多次元ニュートリノ輸送を含む超新星シミュレーションはまだ始めたばかりのため。
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今後の研究の推進方策 |
現段階では、京都大学の長倉氏、沼津高専の住吉氏らが開発した、近似なしのニュートリノ輸送を含む流体シミュレーションコードに、申請者の作製した状態方程式は組み込まれている。今後は、そのコードを使い超新星爆発シミュレーションを行い、重力崩壊型超新星爆発における、状態方程式、原子核とニュートリノ反応の役割を調べていく。
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