研究概要 |
ChlRは環境中の酸素レベルを感知して転写を制御する転写活性化タンパク質である。しかし、酸素環境の感知機構は全く未知であり、嫌気環境適応に欠かせない情報のインプット段階を解明する必要がある。精製ChlRのスペクトル特性からChlRは鉄硫黄クラスター保持していると推定され、これが酸素環境の感知を担っている可能性が示唆された。鉄硫黄クラスターは酸素にさらされると速やかに崩壊するという性質を持っており、これまでに鉄硫黄クラスターを介して酸素レベルを感知する転写制御タンパク質の例がいくつか報告されている。鉄硫黄クラスター保持には多くの場合、システイン残基が関わっており、ChlRのアミノ酸配列中には5つのシステイン残基(Cys18,Cys25,Cys63,Cys124,Cys126)が存在する。そこで、鉄硫黄クラスター保持に関わるシステイン残基を特定するために、それぞれのシステイン残基をアラニン残基に置換した変異型ChlR(C18A,C25A,C63A,C124A,C126A)を調製し、それらの吸収スペクトル測定により鉄硫黄クラスターの有無を検討した。その結果、C18A,C25A,C126Aでは鉄硫黄クラスターが保持されていない事が明らかとなり、これら3つのシステイン残基(Cys18,Cys25,Cys126)が鉄硫黄クラスターの保持に関与している可能性が示唆された。 また、ChlR非依存的な嫌気環境適応機構の解明のため、トランスポゾンをランダムに挿入したラン藻の変異株ライブラリーの解析を行った。以前に単離した嫌気環境下で生育不良を示す12株について、そのトランスポゾン挿入部位の解析を行い、現在までに8株についてトランスポゾン挿入部位を明らかにした。
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