研究概要 |
本研究では,データマイニング手法を工具カタログデータに適用することにより,粗加工から中粗加工に適用可能な切削条件を決定できる支援システムを提案すること,切削条件決定支援システムによって導出される切削条件に対する環境負荷を評価することによって,試作レス金型加工による環境にやさしいものづくりシステムを提案することを目的とする.切削条件決定支援システムの検証実験によって,ラジアスエンドミルを用いた金型鋼の粗加工において,カタログ推奨条件より寿命と切削効率のバランスの良い切削条件の導出に成功した.新しいデータクレンジング手法の1つとして切削条件決定に自明な変数を固定する手法によって,切削工具メーカーごとの切削条件設定の特徴を抽出することが容易となることがわかった.導出されたマイニング条件がカタログの推奨する切削条件域の範囲内において,どの程度の実用性を有するのかを視覚的に判断できる切削条件域のモデル化が可能であることが判明した.環境への影響を定量的に評価する手法であるLCAを用い,カタログが推奨する切削条件,マイニングによって得られた切削条件,熟練技術者が推奨する切削条件を環境負荷の観点から評価することによって,試作レス金型加工を実現できる環境負荷予測モデルの構築を行った.その結果,習熟度曲線を考慮することにより,マイニング条件を用いることで初期段階の時間や工具,電力消費を省くことができる有効性が示された.ボールエンドミルを対象とし,金型の自由曲面加工のための切削条件決定支援システムの提案を行った.K-means法において,ボールエンドミルの刃部の正味長さを数学的に近似計算することによって,効果的にクラスタリングを行うことができた.また切削条件決定式の導出に,応答曲面法を導入することにより,カタログが推奨する条件設定の傾向をより精度高く抽出することが可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
チタン合金や炭素繊維複合材料,超耐熱合金などは低熱伝導性,高い加工硬化性,高い凝着性等を有するため「難削材料」と称され,鋼の切削加工において一般的であった加工法や切削条件下においては工具の非定常摩耗が急速に進展する.上記に加えて,高速度,高能率な切削を実現するためには,切削時の加工面形状の起伏に起因する再生型びびり振動の抑制を考慮する必要があり,最適な切削条件およびツーリング方法の決定は困難である.そこで,今後の方針として,提案する工具カタログマイニング手法を難削材料加工用のエンドミルに適用することにより,高能率な切削加工が実現可能な切削条件決定の指針を明らかにする.また複合加工機を用いて工具姿勢を変化させたときの切削力変動成分から現象の安定性を考察する.
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