研究課題/領域番号 |
12J00139
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森下 翔 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 測地学 |
研究概要 |
【文献調査】 本年度中の文献調査の目標は、科学研究についての資料を幅広く渉猟し、本研究をより広い科学研究の文脈の中に位置づけるための方途を探ることであった。具体的には文化人類学・科学論・地球物理学の分野に関する文献研究を行った。文化人類学分野については近年盛んに主張されている理論的動向である「存在論的転回」についての理解を深めたほか、合理性に関する論争を通じて「科学」と表裏一体の関係にあった妖術論・儀礼論についての理解を深めた。科学論の分野については科学の民族誌に関する読書会を定期的に開催するとともに、研究会への参加等を通して近年の科学技術社会論の動向に関する知見を深めた。調査対象である地球物理学に関する文献研究では、当該分野の歴史的発展の経緯ついて理解を深めた。 【フィールド調査】 京都大学理学部での参与観察を引き続き行った。それまでの京都大学理学部での参与観察を引き続き行った。さらに測地学講演会(研究大会)の聴講、新潟のひずみ集中帯におけるGPS観測への同行、インドネシアにおける二酸化炭素の回収・貯留の国際会議の聴講および重力観測への同行を通じて、地球物理学の一分野における研究・観測が行われている仕方についてのデータを収集した。新潟でのGPS観測やインドネシアでの重力観測においては、重力観測・GPS観測観測の最新の動向について把握できたほか、実際に観測を行なっている最中のインフォーマルな会話において次の観測の具体的な内容が計画されている仕方を知ることができた。 【論文投稿・学会発表等】 学会発表として、平成24年4月に応用哲学会(於:千葉)、5月に地球惑星科学連合大会(於:千葉)、6月に日本文化人類学会(於:広島)、10月にSociety for Social Studies of Science(於:コペンハーゲン)、12月に科学社会学会(於:東京)での口頭発表を行った。また修士論文の一部を改稿した論文を投稿し、現在審査中である。その他のアウトリーチ活動としては、現地への還元として測地学ゼミでの発表、対象の隣接分野である地震学ゼミでの発表、発表者の隣接研究分野である科学哲学ゼミでの発表などをそれぞれ行った。また、8月には科学技術社会論の若手研究会であるSTS Network Japanの開催する夏の学校を主催し、ミクロな視点からの科学技術論をテーマに、科学人類学の存在を周辺領域の研究者へアピールした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、地球惑星物理学の一分科への参与観察を通じて、その科学実践を「観測」「操作」「機器開発」の三つの次元から描写し、その存在論を妖術・儀礼論との比較の中で相互反照的に解明することにある。 本年度は文献調査を通じて、妖術・儀礼論への理解を深めるとともに、固体地球物理学における「観測」および「操作」の発展の歴史を丹念に跡付けることができた。またフィールド調査を通じて、歴史的な観測の発展と現在の研究の動態を関連づけて把握することができた。またこれらの成果を学会の口頭発表等において発表した。以上のことから、当該研究は当初の計画通りおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究において、固体地球物理学の分野においては流体系の地球物理学の分野に比べて諸々のモデルは発展しておらず、分野によって観測とモデルの関係がさまざまであることが明らかとなった。こうした分野による違いは観測を整備することのできる組織力や財政状態といった社会的側面と密接に関連しており、そうした連関の存在は国内・国外の科学実践における観測とモデルの関係等を比較することによって浮き彫りにできると思われる。そのため今後の計画として、当初計画していたアメリカの測定機器開発機関での調査に代えて、国外のラボラトリーでの参与観察を行う予定である。具体的な調査地としては、今年度調査を行ったインドネシアを候補として現在交渉中である。
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