研究課題/領域番号 |
12J00139
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森下 翔 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 科学技術の人類学 |
研究概要 |
【フィールド調査】 調査2年目となる本年度は、よりフィールド調査に重点をおいて研究を行った。京都大学理学部での参与観察を引き続き継続することに加え、測地学的実践の国際比較を行うために、インドネシア・バンドン工科大学測地学研究グループでの参与観察調査を行った。インドネシアでは、近年の地球温暖化に対する社会的関心の増加に伴い、二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)プログラムに関連した日本とインドネシア共同の測地学的調査が行われているほか、日本の研究者と共同での地震・火山観測等が比較的頻繁に行われている。そのため本滞在は国際プロジェクトにおいて「観測」「操作」がいかなる形で実施されるかという過程を調査できる貴重な機会であった。また、観測機器の「開発」については、重力計の観測機器を開発する研究者へのインタビュー調査を行った。その他、データを解析している研究者の動画データなども収集した。 【文献調査】 文化人類学の分野の先行研究については、近年関心の増大している『存在論的転換』についての関連文献をさらに読み進め、理解を深めた。科学論の分野においては、同じく近年関心の増大している『環境インフラストラクチャー』についての理解を深めた。 【論文投稿・学会発表等】 前年度に査読誌『文化人類学』に投稿し、審査中であった論文「不可視の世界を畳み込む : 固体地球物理学の実践における『観測』と『モデリング』」が受理された。本研究では地球物理学における観測・モデリングを通じて「地球の内部」という不可視の領域に存在するさまざまな対象が、可視的・実在的な対象として立ち現れるメカニズムを分析した。その他、東アジア科学技術社会論学会での発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、地球惑星物理学の一分科への参与観察を通じて、その科学実践を「観測」「操作」「機器開発」の三つの次元から描写し、その存在論を妖術・儀礼論との比較の中で相互反照的に解明することにある。本年度は固体地球物理学における「観測」および「操作」のプロセスについて、測地学の事例を参照しつつ、地球の内部の存在者が「実在化」する過程として記述し、論文として投稿、受理された。またフィールド調査を通じて、固体地球物理学の国際研究の動向を具体的に把握することができた。以上のことから、当該研究は当初の計画通りおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度調査を行ったインドネシア・バンドン工科大学の測地学研究グルーブにおいて長期の参与観察調査る。これまで調査を行ってきた国内における測地学の実践との比較を通じて、観測・研究・機器の開発をめぐる実践が、それぞれの国の社会的背景とどのように結びついているのかを調べる。また、研究成果の報告として、これまでの調査結果を総合して論文を執筆し、Science as Culture誌などの国際査読誌に投稿することを目指す。そのほかに、国際ワークショップ等での発表を複数行なう。
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