本研究は、「近代における書画会の史的考察」と銘打ち、近代における書画会の実態とそれを支えた社会背景を明らかにするとともに、「近代日本美術」を再考察することを目的としている。 当時の社会的背景、慣習、人々の考え方といった書画会を支えた背景を調査した。 明治10年代前半の書画会を近代以降における書画会の隆盛期として設定し、それ以降の実態的変遷、人々の意識の推移などを各種新聞・雑誌・引札・日記・回顧談・絵びらなどを資料として用いながら考察した。 以上の目的を達成するため、下記の研究を進めることを本年度の計画とした。①書画会ネットワーク形成のキーパーソンとして考えられる、仮名垣魯文の調査、②席上制作について江戸から近代にかけての実態調査と認識調査、③書画会に対する人々の認識に関する調査、以上3点である。 本年度は2回の研究発表を行い、2本の論文掲載が決定した。さらにもう1本論文を投稿し現在査読中である。掲載が確定した2つの成果内容はいずれも仮名垣魯文の書画会参画について述べたものである。引札・新聞・戯作など、採択1・2年次に収集した当時の史料を使用・分析し、会の実態や当時の人々の認識、社会的役割を論じることができた。査読中の論文については、書画会文化に慣れ親しんだ者が博覧会の流行の中でどのように立ち回ったのか、近代化との関わりについて論じた。 以上の成果では計画の②にあたる席上制作が主眼となっていない。しかし分析した各事例の紹介の中で席上制作についても触れることができた。全体として明治期の書画会の実態を明らかにしながら、近代における書画会について考察する、という目標に取り組むことができたといえよう。
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