研究概要 |
【目的】 本研究では、ユビキチン(Ub)とユビキチン修飾酵素の間の動的な認識機構を解明することを目的とした。これまで、Ub-酵母ユビキチン加水分解酵素(YUH)複合体と、Ub-ユビキチン結合酵素-ユビキチンリガーゼ三者複合体という、異なる二つの相互作用系を解析対象として研究を行ってきたが、投稿論文作成中の前者のテーマについてのみ、報告する。本テーマではとくに、YUHがUb構造ドメインを選択的に認識し、加水分解する動的な反応機構を解明することを目的とした。 【当該年度の研究成果】 昨年度までに、Gd^<3+>が誘起する常磁性緩和促進効果(PRE)を利用したNMR解析によって、活性中間体を模倣したユビキチンアルデヒド(Ubal)-YUH複合体の結晶構造とは異なる動的な結合様式が存在することを明らかとしていた。当該年度では、まず、NMRスペクトルと緩和分散実験から、その動的複合体が活性中間体に先行して過渡的に形成されることを示した。そのうえで、Mn^<2+>, Fe3+, VO^<2+>, Ni¥^<2+>の4種類の常磁性金属が誘起するPREを利用して解析することで、その動的複合体に置ける距離情報を正確に取得した。最後に、得られた距離情報を入力して、XPLOR-NIHによる構造計算を行い、動的複合体の結合様式を可視化した。 【意義・重要性】 本研究で明らかとなった、活性中間体に先立って形成される動的複合体では、UbC末端がYU且の反応部位に入っていない状態であった。このような結合様式であれば、YUHと近接したまま、UbC末端が多様なコンフォメーション間を交換することにより、結合に適した構造を効率よく選別できる。これにより、活性中間体を、高い選択性で、効率よく形成できると提唱した。
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