骨格筋内に蓄積した脂質はインスリン抵抗性の原因の1つである。細胞内の脂質を減らすためには運動によってその消費を増大させることが必要であるが、それとは別に、細胞は悪性脂質を排出する機構を有する可能性が示唆されてきた。本年度では、脂肪酸の生体膜輸送のキャリアとして働くカルニチンに注目し、その体内動態を明らかにすることを目的とした。まず、イメージング質量分析によってマウス骨格筋におけるカルニチン分子種の定量と可視化を行った。内因性の脂質結合型カルニチンは、筋線維タイプに依存した局在を示すことが明らかとなった。続いて、細胞内外カルニチン輸送をトレーシングするために、安定同位体で標識したカルニチンを投与し、その分布の解析を行った。内因性および外因性のカルニチンを分離して検出することに成功し、生体内のカルニチントレーシング実験の条件検討が進んだ。また、それと並行して、培養骨格筋細胞を用いたカルニチンの輸送調節機序の解析を行った。電気刺激条件と培養条件の検討を行い、細胞障害が生じない実験条件を決定した。しかしながら、C2C12細胞ではカルニチン輸送タンパクの発現量が組織に比べて少なく、電気刺激によるカルニチン輸送の調節が観察されなかった。今後は、培養条件や細胞の種類の変更する予定である。
|