研究課題
適切な強度の配位子場をもつ金属イオンは、熱・光などの外場によりスピン状態が可逆に変化するスピンクロスオーバー(SCO)現象を示し、多くの鉄錯体でSCO現象が報告されている。SCOサイトのような分子内に2つ以上の双安定性部位をもつ多重双安定性金属多核錯体は、外場に応じて多段階状態変化を示すことが期待され、多重応答性分子素子としての応用が期待される化合物群である。本研究課題では多重双安定性を示す鉄グリッド型SCO錯体の合成法の確立とその物性制御について研究を行い、2年目にあたる本年度は、酸化物基板・ナノ粒子界面上に多重双安定性鉄錯体を修飾することを目的として研究を遂行した。具体的には多重双安定性を示すグリッド型錯体に、酸化物界面と親和性の高いカルボキシ基を導入することで酸化インジウムスズ(ITO)基板およびITOナノ粒子界面への修飾を行った。カルボキシ基は配位子の合成法を工夫することで配位子に化学修飾した。カルボキシ基をもつグリッド型鉄四核錯体を修飾したITO電極のサイクリックボルタンメトリーを測定したところ、4つの鉄イオンの酸化還元挙動に由来する酸化還元波が観測された。電位の掃引速度依存測定はグリッド型錯体が基板上に固定されていることを示し、基板のAFM像は錯体の多層膜を形成していることを示唆した。また配位子置換法によりグリッド型錯体を導入したITOナノ粒子のTEM像はナノ粒子同士の凝集を観測し、グリッド型錯体が修飾されたことを示唆した, 今後は磁化率やXAS測定により、ITO界面上での磁気的多重双安定性について物性評価を行う。
(抄録なし)
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Inorganic Chemistry
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http://www.chem.tsukuba.ac.jp/oshio/