研究課題/領域番号 |
12J00335
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
今井 真士 上智大学, 外国語学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 比較政治学 / 権威主義体制 / 政党政治 / 暫定政権 / 定性的方法論 / 比較歴史分析 / エジプト |
研究概要 |
「権威主義体制と『単一政党優位』の時代の政党政治」という研究課題の下、本年度は、中東地域、特にエジプトのムバーラク政権崩壊以降の各時期の政党政治を分析するとともに、そうした一連の分析の方法論的基礎を構築するため、比較政治学の方法論の体系的な整理を行なった。 権威主義体制下の政党政治に関しては、1つの論文を刊行し、1回の学会報告を行なった。まず、「憲法起草と暫定政権期の政党政治 : ポスト・ムバーラク期のエジプトにおける政党間対立の分極化過程」と題する論文において、筆者は、先行研究で十分に着目されなかった暫定政権(interim governments)という分析枠組みを取り上げ、その動態的過程を論じるため、エジプトの軍最高評議会主導の暫定政権(2011年2月~2012年6月)を事例に用いた。特に、憲法起草と議会選挙の実施をめぐるエジプトの軍部と最大野党のそれぞれの戦略的行動の齟齬が、他党を巻き込み、流動的な政党システムに一定の凝集化とブロック化をもたらしたことを明らかにした。 次に、「エジプト第二共和政と単一政党の優位? : 自由公正党の優位政党(ないしは覇権政党)化の諸条件」と題する学会報告において、筆者は、第二共和政(2012年6月~2013年7月)を主導した自由公正党がムバーラク政権下の国民民主党のような「単一政党優位」を構築する可能性を探った。特に、自由公正党は、政治的条件(執政府・立法府における相対多数の獲得)と社会的条件(社会的動員の確保)の2つの点で有利な状況にある一方、経済的条件(好況の維持)の達成に困難を抱えていることを指摘した。 最後に、「文脈と過程追跡の論理学的基礎 : 比較歴史分析における着想と分析手法の発展」と題する学会報告において、筆者は、定性的方法論を用いる比較歴史分析の系譜を体系的に整理することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「権威主義体制と『単一政党優位』の時代の政党政治」という研究課題に即して、1本の論文を発表し、2回の研究報告を行ない、1本の論文を掲載が決定した。また、中東地域の政権崩壊と新政権の樹立の動きを踏まえて、権威主義体制下の政党政治の議論と政権崩壊後の政党政治に関する議論を同時進行で行なった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も研究計画に即して研究を進めていく。4月初旬の現時点において『日本比較政治学会年報』第16号に「権威主義体制下の単一政党優位と体制変動 : 競合性の制度化の効果」と題する論文を刊行する予定である。また、2013年度まではエジプトのみを分析対象にして議論を進めたが、2014年度はイエメンなどの他の国々との比較研究に焦点を絞る。
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