研究課題/領域番号 |
12J00358
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石井 琢郎 千葉大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 排尿機能障害 / 内視鏡画像 / 数値流体力学 / 排尿流シミュレーション |
研究概要 |
本研究では蓄排尿機能障害の評価法として、従来困難であった尿道内部、特に蓄排尿障害の原因疾患である、膀胱頚部や前立腺部における粘弾性や形状の性状変化が流体に与える影響を数値化することを目的として、膀胱尿道鏡映像を用いた患者の尿道形状取得と、尿道の尿輸送機能評価法の確立に取り組んできた。 当該年度においては、これまでに提案した尿道内腔形状取得法によって構築した尿道モデルを用いた尿道内流体解析によって得られる各種パラメータが、従来の臨床検査法によって得られる排尿機能指標とどのような関係を持つのかについて重点的に検討した。 まず、投薬前後及び患者間のデータを適正に比較するため、生成した尿道パノラマ画像から、解剖学的特徴箇所を指定する事で、同一患者の投薬前後における解析領域が等価になるよう支援する、データアラインメントツールを開発した。さらに、本研究の尿道モデル生成手法は、臨床画像における様々なノイズに対するロバスト性が低いため、解析結果、構築した尿道モデル、内視鏡ビデオの時間及び位置関係を統合し、解析結果の妥当性に対する検証支援ツールを開発した。 これらのツールを用いて、千葉大学附属病院泌尿器科の協力を得て、計17例の排尿障害に対する投薬治療前後の膀胱尿道鏡映像を用いた尿道内腔形状構築と、排尿流シミュレーションによる尿輸送機能の推定を行った。さらに膀胱尿道鏡映像取得時に得られた臨床における排尿機能指標との関連を検討した。 シミュレーションの結果、提案手法により構築した前立腺部尿道モデル内腔での圧力損失は、薬物投与前に比べ薬物投与後に有意に減少した。この傾向は、現在臨床で排尿障害の代表的指標である、最大尿流量率における改善度合いと有意に相関することを確認した。これらは、提案手法における尿道モデル構築や、シミュレーションに用いている境界条件等の妥当性を示す上で、重要な知見となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画における当該年度の目標の一つであり、排尿流シミュレーションによる診断及び治療支援への発展に重要な要素である、内視鏡による尿道形状取得法の精度向上を目標とした、尿道組織内の反射特性分布のクラスタリング手法の有用性に関する検討、及び反射特性のばらつきを考慮した補正手法が十分に検討されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度における検討では、本研究における排尿機能評価法と従来の臨床検査指標が有意に相関し、投薬による排尿機能の改善効果が測定できることを示した。今後、従来法では困難である、尿道内腔における排尿流の障害部位を、より細かに特定し、またそれらの知見を診断、及び治療時の支援材料とするためには、膀胱尿道鏡映像を用いた尿道内腔形状構築の高精度化と、ロバスト性の向上が必要である。 当該年度に十分に取り組むことができなかった尿道内腔の分光反射特性分布による形状構築時の補正アルゴリズムに継続して取り組み、前立腺部尿道における疾患・治療による組織性状の変化を、より繊細に捉えることを目指す。
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