研究課題
本研究では、前立腺部尿道の前立腺部尿道における蓄排尿機能障害の評価法として、従来困難であった尿道内部、特に蓄排尿障害の原因疾患である、膀胱頚部や前立腺部における粘弾性や形状の性状変化が流体に与える影響を数値化することを目的として、患者の尿道形状取得と、尿道の尿輸送機能評価法の確立に取り組んできた。本年度においては、下部尿路形状構築における構築精度向上のためのアルゴリズムの開発と、臨床データを用いた提案手法における臨床的有用性についての検討を実施した。本手法における形状モデルの精度向上には、内視鏡画像における同一臓器の色彩情報を、臓器表面の血流量によって分別することが必要である。内視鏡から収集された下部尿路の色彩情報の分布をHSB色空間上に表現し、最尤法を用いて複合ガウス分布としてフィッティングすることで、収集した色情報を、低血流部位、高血流部位、非尿道臓器の3分布に分割できる手法を開発した。次に、臨床データを用いた、本研究の臨床的有用性について検討した。提案手法によって構築した、膀胱尿道鏡映像を基にした下部尿路の形状モデルを用いて、有限体積法による定常流解析を行い、尿道内における流れを可視化した。前立腺部尿道における圧力損失を、本手法における排尿症状の指標とし、従来の臨床検査におけるデータとの関連性を検討した。その結果、圧力損失量は前立腺体積に強い相関を示し、本研究が患者の尿道内腔の正常を適切に再現していることが示唆された。また、排尿症状の改善薬剤の投与により、臨床データと同様に、提案手法による圧力損失も改善傾向を示すことも確認された。また、本手法では、尿道内における詳細な流れの振る舞いを可視化できることから、尿道内における排尿症状の責任部位を同定し、より繊細な治療法を可能にすることが示唆された。今後、医学研究として大規模な症例数における本手法の評価や治療への応用を目指した検討が実施される見込みであり、現在、臨床現場での使用を想定したソフトウェアの開発を実施している。
2: おおむね順調に進展している
本年度までに本研究の主目的である排尿機能評価のための必要なソフトウェアの開発、ワークフローの確立、小規模な臨床データによる本研究の臨床的有用性の確認を完了している。今後臨床における大規模データを用いた検討などを含む、医療分野での本研究成果を用いた研究や技術応用等、発展と実用化が期待される。
(抄録なし)
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Journal of Mechanics in Medicine and Biology
巻: 14(in press)
10.1142/SO219519414500523
IEEE Journal of Translational Engineering in Health and Medicine
巻: 2 ページ: Article # 1800709
10.1109/JTEHM.2014.2316148