研究課題/領域番号 |
12J00372
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今村 尚人 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 逆解析 / CSEM法 / Full waveform inversion |
研究概要 |
本年度は主に逆解析ソフトの発展に取り組み、それと平行して実フィールドデータの処理手法の開発に取り組んだ。 最初に、電磁探査手法を海底熱水鉱床に適用する際にあたって利用する逆解析ソフトの作成について述べる。これまで電磁探査においてはTikhnovの正則化に基づく逆解析手法が一般的であった。しかしながら本手法を用いる場合、3次元問題では莫大な計算時間がかかること・シミュレーションモデルに制約をかける必要があるという問題点があった。これらの問題を解決するために主に弾性波探査で用いられている全波形インバージョン手法を電磁探査に適用した。その結果、海底熱水鉱床をモデル化した場合に対して、本研究で開発した逆解析コードを適用した場合でも海底熱水鉱床に対して、十分に解像度があることを示した。さらに人工電流源を用いた電磁探査法の場合、電流送信の方向により逆解析の解像度が変化することが指摘されていた。本研究では、海底熱水鉱床を含むモデルに対して電流送信方向を変化させ、特に水平方向に電流送信を行った場合に解像度が高いことを確認した。さらに電場ベクトルを解析することで、水平方向に電流送信を行った場合、水平方向に解像度が高くなることを明らかにした。最後に、複数方向に電流送信を行ったデータや複数の受信された電場成分を用いることにより、解像度が向上することを示した。 次に実フィールドで取得したデータに対して使用するフィルター開発について述べる。実フィールドでは電流送信源をROV(Remotely Operated Vehicle)やAUV(Autonomous Underwater Vehicle)に曳航しながら、電流送信を行う。しかしながら、これらのROVやAWには十分な位置決定精度がなく、数メートルから十数メートルの位置決定誤差があることが明らかになっている。本研究ではこれらの位置決定誤差が正規分布に従うと仮定し、カルマンフィルターを用いて真の位置の推定を行った。その結果、ノイズが含まれるデータであっても、その性質(平均・分散等)が先験的に分かっていれば、真の位置が推定可能であるということが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は数値計算データに基づき、逆解析コードの完成および検証を行うことができた。また、人工電流源電磁探査法を海底熱水鉱床に適用する際に水平方向の送信電流を用いることが重要であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は作成した逆解析を実データに適用する予定である。しかしながら、実データにはノイズが混入していることから位置決定ノイズや送信ノイズなどをフィルター手法を用いて適宜取り除く必要があると考えている。
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