本年度は沖縄海域で得られた海底熱水鉱床のデータの処理手法を開発・適用し、そこで得られたデータに対してこれまで開発を行った人工電流源電磁探査法(CSEM法)の逆解析手法の適用を行った。 最初に海底熱水鉱床のデータに対して適用したデータ処理手法の概要を述べる。今回、沖縄海域の海底熱水鉱床周辺で取得したデータには人工電流源から観測される電磁場の他に海流や装置の揺動、データ記憶装置の書き込みノイズが見られている。これらのノイズを低減するために独立成分分析を用いた。その結果、信号とノイズを分離することができノイズをおよそ十分の一程度に低減することが可能となった。これにより従来用いることができなかったようなデータを利用することができるようになり、逆解析結果の精度の向上に資することができた。 次にここで得たデータに対して人工電流源電磁探査法(CSEM法)の逆解析手法の適用を行った。海底熱水鉱床周辺は地形が急峻であることが多いため、地形を考慮してモデリングをする必要がある。本研究ではこれまで数多く用いられている有限要素法ではなく粒子法を用いて地形の取り扱いを行った。粒子法を行うことで、有限要素法よりも容易に地形をモデリングすることで高速に計算を行うことができるというメリットがある。本手法を用いることにより海底下に非常に電流の通りやすい構造が存在することが明らかとなった。この構造は海底に埋没した硫化鉱床もしくは、熱水溜まりであることが想定されるが、より正確に判断するためには地質的な解釈や熱流動のデータと照らし合わせる必要がある。 以上のように海底熱水鉱床周辺の比抵抗構造をCSEM法で明らかにした例は過去になく、また同手法において3次元で地形を考慮した逆解析を行った例は非常に少ない。このように本年は本研究の課題である海底熱水鉱床周辺の比抵抗構造を明らかにすることに成功した。
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