研究課題/領域番号 |
12J00375
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
榮村 奈緒子 立教大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 二型 / 種子散布 / 海流 / 鳥 / クサトベラ / 海岸植物 / Scaevola属 |
研究概要 |
表現型多型は、多くの生物でみられる現象であり、環境変動に対する集団を維持する適応機構や種分化をもたらす要因となる。海岸植物のクサトベラには果実が水に浮くコルクと鳥が食べる果肉を持っコルク型と果肉のみをもつ無コルク型の二型が存在する。果実型は個体によって一定し、二型は集団内で混在して生育している。本研究の大きな目的は、この二型における適応機構を理解することである。 前年度の研究では、この二型の機能的役割を明らかにするために、二型の分布と海流と鳥による種子散布能力を比較した。その結果、二型の分布は南西諸島と小笠原諸島に広く見られ、砂浜でコルク型、海崖で無コルク型の出現頻度が高いことが示された。また、コルク型果実は海流散布に、無コルク型果実が鳥散布に優れた潜在的能力をもつことが海水浮遊実験と果実形態の比較から示された。 今年度は、RAD-seq法を用いた遺伝解析を行い、この二型の遺伝的分化の程度と遺伝子流動量の違いを調べた。解析には南西諸島5島と小笠原諸島1島の95個体(コルク型51個体、無コルク型39個体、中間型5個体)を用いた。その結果、型間および島間で空間的遺伝構造が見られないこと、型間で遺伝的交流があることが明らかになった。つまり、異なった果実型を示す個体は、互いに隠蔽種ではなく、種内変異であると考えられた。また、コルク型は約300km以上離れた島間の遺伝子流動量が無コルク型よりも高い値をしめした。このことから、海流散布能力の優れたコルク型は、鳥散布能力に優れた無コルク型よりも島間の分散能力が優れていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査および実験は当初の計画以上に進展することが出来たが、研究成果を論文として発表するのが遅れているため②を選択した。現在、本研究に関する論文2本を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、コルク形質に関与する原因遺伝子を推定することによって、遺伝子レベルで適応機構を理解したいと考えている。また、本種は世界中の熱帯・亜熱帯地域の海岸に広く分布しているが、今回の研究は日本国内のみで、一部の分布域に限られる。二型の適応機構を理解するには、分布域全体における二型の分布と空間的遺伝構造の関係を理解する必要があるため、今後はより広い範囲を調査地として研究を進めたいと考えている。
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