研究課題/領域番号 |
12J00395
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡 弘 北海道大学, 大学院・工学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ステンレス鋼 / ナノインデンテーション / 透過型電子顕微鏡 / マルチスケールモデリング / 核融合炉 / 照射脆化 |
研究概要 |
1、オーステナイト316鋼において、転位組織と降伏強度・硬さが線形の相関関係にあることを明らかにし、不純物(カーボン)濃度および温度が相関関係に及ぼす影響を、傾きから得られる強度因子αによって整理した。その結果、特に高温(500-700℃)では不純物濃度と強度因子αとに密接な関係があることが分かった。具体的には不純物濃度が低い場合、αは小さくなる傾向がみられた。したがってこの知見を中性子照射された材料に適用すると、照射に伴う炭化物などの析出によって引き起こされる母相の溶質原子濃度変化が、転位の強度因子を低下させ、照射脆化を招くと説明することができる。 2、ナノインデンテーション試験および押込みにより形成された圧痕の断面組織観察により、微小スケールでの硬さと組織変化の関係について検討した。イオン照射された材料に対する硬さ評価では、アプローチとして基板上の薄膜硬さ評価の手法・知見を取り入れた。その結果、押込みによる変形がイオン照射を受けた薄膜領域にとどまる場合とさらに深くまで到達する場合とで、得られる硬さには明確な差がみられたことから、押込み変形領域と硬さに密接な関係があることが明らかとなった。さらに、イオン照射層内に存在すると考えられる硬さ勾配について、従来は一度の押込みで勾配を貫通する形で測定していたが、今回FIBを用いたセクショニングにより数層に分割して硬さ測定し、各層のローカル硬さと各層の変形領域体積率の積の合計が貫通押込み硬さと等しいとおくことで、ローカル硬さを求めることに成功した。この知見により、イオン照射材硬さ評価で問題となっていた硬さ勾配効果を補正できる可能性が示された。 3、米国オークリッジ国立研究所にて中性子照射材の組織観察と強度データを取得し、次年度に予定する解析の準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン照射材の硬さ評価について、従来困難とされていた硬さ勾配の影響を、補正により高精度に評価できる見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
転位組織と強度の相関に及ぼす溶質原子および温度の影響について、溶質原子種・濃度を含め幅広く体系的に精査する必要がある。
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