研究課題/領域番号 |
12J00410
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
リ ヒュ-キ 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 高機能自閉症 / バイリンガル / 実行機能 / コミュニケーション能力 / 社会性 |
研究概要 |
本研究では多言語環境における養育がASD児に及ぼす影響について主に以下の二つの項目に従って研究を実施した。 1)実行機能の発達に及ぼす、言語環境と自閉症の交互作用の実証研究 研究協力者である児童に対し、4つの実行機能課題と、言語と知能にかかわる発達検査を実施し、また協力者の親には、コミニニケーション能力と社会性に関わる質問紙に回答してもらった。これらの結果について、ASD/定型発達、バイリンガル(日英)1モノリンガル(日)により分類された4群を今後比較分析する。 今年度の具体的な実施項目は以下のとおりである。2012年10月にカナダのトロントとバンクーバーにある日本人自閉症児の団体を訪問し、バイリンガル環境下に育つ自閉症児とその家族が直面している問題について情報収集を行った。さらに、当該団体に所属する家族から研究協力を得て、日英バイリンガルASD児のデータ収集を行った。2013年1-2月には、金沢市内で日本語モノリンガルの定型発達児およびASD児のデータ収集を実施した。さらに、2013年3月にはアメリカのシカゴにある日英バイリンガル教育を行う小学校を訪問し、日英バイリンガル定型発達児のデータ収集を実施した。以上のように、本研究に必要な4群のデータを収集できた。 2)日中英トライリンガルASD児における会話観察 日中英の多言語環境に育つASD児のケースを対象とし、多言語環境に育つASD児と家族の会話分析の研究を行った。協力者は日本在住の、目中英トライリンガルASD児と家族であり、対象児には言語発達調査を実施したほか、60分間の家族間の自然会話場面を記録した。縦断的に記録した親子間コミュニケーションの特徴を分析し、2012年6月にアイルランドに開催された国際学会にて、その成果を報告した。学会では他の専門家から助言指導を得ることが出来た。2013年1月には、新たのデータを追加するため、協力者の家族自然会話のビデオデータ収集し、日中英ASD児の言語発達調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究必要に必要なデータ(日英バイリンガル定型発達児/ASD児,日モノリンガル定型発達児/ASD児)を収集でき、研究計画を順調に実施できた。しかし、日英バイリンガルASD児の研究協力者を得る事は難しく、目標としていた人数には届かなかった。日中英トライリンガルASD児と家族の研究については、海外の学会にて成果報告を行い、今後の分析のため有意義な資料を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、今年度収集したデータを分析することが最優先である。その結果によって、追加データの収集や分析方法の修正が必要となる。また、カナダで訪問した団体に依頼し、日英バイリンガルASD児の研究協力者を増やすよう努める。当初の研究実施計画においては、イギリスで英語モノリンガルの定型発達児/ASD児のデータ収集する予定であったが、協力先であるシェフィールド大学との共同研究の申請や参加者募集の手続きが想定より遥かに煩雑で時間を要することが判明したため、研究期間内にデータ収集を終えることは困難であるという見込みに至った。よって、本研究で扱う対象群は、当初計画したASD/定型発達、バイリンガル(日英)/モノリンガル(日本語)/モノリンガル(英語)に分類された6群から定型発達1ASD、バイリンガル(日英)1モノリンガル(日本語)により分類される4群に限定し比較することにした。
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