昨年度の研究成果を活かし、小笠原諸島の父島と母島において、アカガシラカラスバトの食物構成とその季節変化及び経年変化、外来種の利用状況を明らかにした。同時に、各島の生息地における結実調査と主要な果実の栄養分析を行い、食物選択に関わる要因と外来種利用の意義を解明した。 小笠原諸島の父島及び母島において、2011年6月から継続しているアカガシラカラスバトの糞サンプル採取を、2013年5月まで行い、約800個のサンプルを採取した。また、糞サンプルの採取と並行して生息地における結実調査を毎月行い、父島において2年分の、母島において1年分の結実データを得た。採取した糞サンプルについてはDNAを抽出し、葉緑体trnL P6loop領域をPCR増幅した。得られたPCR産物に対して、次世代シーケンサーlon PGM (Life Technologies)を用いて大量の塩基配列を解読し、2011年に作成した種子植物の塩基配列データベースと照合しすることで食物の同定を行った。また、父島と母島において採取した39種の果実について、京都大学霊長類研究所において栄養分析を行い、粗脂肪、粗タンパク質、粗灰分、中性デタージェント繊維(NDF)の含有率を算出した。 父島及び母島におけるアカガシラカラスバトの食物構成は、明瞭な季節変化を示し、父島においては年によっても異なっていた。各島における結実フェノロジーのデータと照合すると、外来種の利用頻度は、利用可能な在来種が少ない時期に増加する傾向にあった。また、アカガシラカラスバトは、脂肪含有率の高い果実を選択的に採食することが示された。アカガシラカラスバトに利用される外来種の脂肪含有率は在来種よりも低く、選好性の強い在来種の不足を補う役割を果たしていると考えられた。小笠原諸島において、アカガシラカラスバトの食性を考慮して外来種駆除を行う場合、在来の食物が不足する時期の食物確保を行う必要があるといえる。研究成果は第61回日本生態学会、日本植物分類学会第13回大会、第125回日本森林学会において発表し、現在論文を執筆中である。
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