研究課題/領域番号 |
12J00473
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平松 直樹 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | シグマ1受容体 / ドパミン神経系 / GABAA受容体 / セロトニン1A受容体 |
研究概要 |
申請者はこれまでに、精神疾患と密接に関連している前頭薬ドパミン(DA)遊離が、うつ病などの神経ステロイドが低下した病態においてセロトニン(5-HT)1A受容体-シグマ1受容体のシグナル間相互作用により調節される可能性を見出してきた。本研究では、このDA遊離増強作用における神経ステロイド低下の役割、ならびに本作用に関与する脳内活性化部位を明らかにすることを目的として、神経化学的、免疫組織化学的解析を行った。 当該年度はまず、神経ステロイドがGABAA受容体の内因性リガンドであることに着目し、神経ステロイド低下状態における脳内GABAA受容体機能をペントバルビタール誘発睡眠時間の測定により評価した。その結果、神経ステロイド低下状態では正常状態と比較してペントバルビタール誘発睡眠時間が短縮しており、脳内GABAA受容体機能が低下することを見出した。そこで次に、invivo脳微小透析法を用いて、5-HT1A受容体-シグマ1受容体の相互作用による前頭葉DA遊離増強作用にGABAA受容体機能低下が関与するか検討を行った。末梢の神経ステロイドが低下した状態下でのDA遊離増強作用は、GABAA受容体アゴニストであるジアゼパムにより抑制された。さらに、神経ステロイドが正常な状態であっても、GABAA受容体アンタゴニストであるピクロトキシンを投与し、GABAA受容体機能を低下させた状態では、DA遊離増強作用が起こることを明らかにした。本成績は、5-HT1A-シグマ1受容体の相互作用における神経ステロイド低下の役割として、GABAA受容体機能低下の可能性を示すものである。 さらに、本相互作用に関与する脳部位を明らかにするため、神経活動マーカーとして汎用されるc-Fos蛋白質発現解析を行った。その結果、前頭葉DA遊離増強作用を示す条件において、前頭葉へ投射するDA神経の起始核である腹側被蓋野のc-Fos発現量が増加することを見出した。以上より、5-HT1A-シグマ1受容体相互作用は腹側被蓋野-前頭葉DA神経系の活性化を伴うことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に実施した研究により、シグマ1受容体と5-HT1A受容体による前頭葉DA遊離調節機構にGABAA受容体機能低下が関与していることが見出され、5-HT1A-シグマ1受容体相互作用の分子基盤の一端を明らかに出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究では、前頭葉DA遊離におけるシグマ1受容体、5-HT1A受容、GABAA受容体による複合的調節機構を見出したが、その詳細なメカニズムまでは明らかにすることができなかった。そこで次年度では、in vivo脳微小透析法を用いて各受容体の脳内責任部位を追究し、相互作用メカニズムの詳細を追究する。 また、相互作用の創薬的意義に関して、前頭葉DA神経系と密接に関連する認知機能やうつ様行動を指標とした行動薬理学的検討により追究する。
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