研究課題/領域番号 |
12J00488
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平井 敏郎 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 抗無機物抗体 / ナノメディシン |
研究概要 |
申請者は、がんや感染症をはじめとする未だ有効な治療薬の無い疾患に対して有効なナノマテリアル創薬の開発を高効率化するべく、ナノマテリアルの潜在能力を最大限に担保できる生物学的な表面修飾技術の開発を目指し、研究を推進している。当該年度は、我々がこれまでに見出した代表的なナノマテリアルであるナノシリカに対する抗体誘導法の最適化を目指し、抗体産生における各種免疫賦活剤やキャリアタンパクの必要性、並びにマウスストレイン間における抗体産生能の差を解析することで、抗シリカ抗体誘導の実験系の最適化を行った。その結果、ナノシリカに対する抗体産生には免疫賦活化剤やキャリアタンパクは必要なく、自身による免疫活性化能によって既に十分に抗体産生を誘導できることが明らかとなった。さらに抗シリカ体産生にはC57BL/6マウスを用いるとその誘導効率が高いことが明らかとなった。また、抗体産生にナノシリカの物性(粒子径)が与える影響を精査し、抗体産生のメカニズム解明に向けた基礎情報の収集を図った。その結果、非晶質ナノシリカに対して誘導される抗体は投与する非晶質ナノシリカの粒子径が70-100nmの範囲にある場合のみ誘導されることを見出し、無機ナノ粒子に対する抗体誘導にはそのサイズが決定的な役割を果たしている可能性を明らかとした。以上の結果は、通常生体により認識されにくいと考えられてきた無機物質に対する異物認識機構を明らかとする意味でも非常に興味深い知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していた実験系の確立を完了し、さらに予定していた抗無機物抗体産生という新たな生命現象のメカニズム解明に向けた基礎情報の習得も順調に進行している。このため、当初の計画通り、次年度以降の計画に推移可能であることから、おおむね順調に進呈していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、現在予定通りに研究が進展しているため、次年度以降も当初の計画通り研究を推進する予定である。 具体的には、ナノシリカによって誘導される抗体の結合力や特異性などの特性を評価するとともに、抗体が誘導されることによるナノ粒子に対する生体の応答性の変化を評価する。このことで、無機ナノ粒子に対する抗体がナノメディシン開発に向けたナノマテリアルの生物学的修飾技術としてナノマテリアルにどのような付加価値を供することが出来るか評価する予定である。
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