研究概要 |
平成24年度は、1塩基部の倒れ込み」という新しい概念を導入した次世代人工核酸の創製及びそれがRNA結合親和性へ与える効果の検証を中心に研究を進めた。塩基部の倒れ込みを強調するようピラノース環を基本骨格とする人工核酸(BsNA)を設計し、D-グルコースから18工程で目的のBsNAヌクレオシドの合成を達成した。BsNAヌクレオシドをホスホロアミダイト体へと誘導し、DNA自動合成機を用いてオリゴヌクレオチドへと導入し、その相補鎖結合親和性をTm値を指標として評価した所、予想に反してBsNAは結合親和性が低いことが明らかとなった。そこで、BsNAヌクレオシドのX線結晶構造解析を行い、その構造を詳細に精査すると、天然のRNAあるいは他の人工核酸と比較して塩基の回転角が大きく異なっていることが判明した。また、BsNAの糖部3'β位の水素原子がオリゴヌクレオチド中で塩基間のスタッキング相互作用を阻害している可能性や、塩基部の倒れ込みを強調しすぎた結果、相補鎖結合親和性が低下したことも考えられる。現在それぞれの問題点を克服するよう設計した各BsNA類縁体の合成を進めており、考え得る要因のうちのどれが相補鎖結合親和性を低下させた原因なのか、追究を試みている。 また、以上の内容に関して計3つの国際学会(The 7th Seoul-Kyoto-Osaka Joint Symposium on Pharmaceutical Sciences for Young Scientists、XX International Round Table on Nucleosides,Nucleotides and NucleicAcids、13th Tetrahedron Symposium-Asia Edition)にて発表を行い、世界中の研究者達とディスカッションを行った。
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