• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

メタボロミクスを用いた糖代謝の新規制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 12J00521
研究機関京都大学

研究代表者

高橋 春弥  京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)

キーワードメタボロミクス / 糖代謝 / LC-MS / PPARα
研究概要

本研究では、脂質代謝制御に重要なペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)を活性化させたマウス血中メタボローム解析により見出され、血糖値上昇抑制効果に重要な代謝物と考えられるリゾリン脂質に着目し、リゾリン脂質の生合成制御及びリゾリン脂質の糖取り込み作用による糖代謝改善のメカニズム解明を目的とした。
まず、リゾリン脂質定量系の構築を、液体クロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(LC-MS)を用いて分析条件検討を行い、高感度な定量系を確立することに成功した。
PPARαは主に肝臓に発現しているため、肝臓が血中のリゾリン脂質の主たる供給源と考えられる。そこで、マウス肝臓初代培養細胞にPPARα活性化剤を添加し、培地中に放出されるリゾリン脂質を先に示したLC-MSを用いた方法で定量した。その結果、活性化剤の添加濃度依存的に細胞から放出されるリゾリン脂質量が増加することを見出した。また、リゾリン脂質を合成する酵素であるボスホリパーゼAについても、活性化剤添加により発現量が有意に増加することを見出した。
次に、上記で検討した作用機序が動物個体レベルでも機能していることを明らかにするため、PPARα活性化剤を投与したマウスを用いて実験を行った。活性化剤投与によるリゾリン脂質の増加量が肝臓及び血中で同程度であることを見出した。また、肝臓でのボスホリパーゼAの発現量は活性化剤投与群マウスにおいて顕著に増加していることを見出した。さらに、肥満状態が悪化するに従い、血中リゾリン脂質濃度が低下し、両者の間には負の相関があることを見出した。以上の知見から、リゾリン脂質の主要供給源は肝臓であり、血中リゾリン脂質は血糖値の上昇抑制に重要な因子であることが示唆された。
さらに、インスリン抵抗性が生じた脂肪細胞にリゾリン脂質を添加することで糖取り込み能が回復する予備実験結果を得ている。この現象について現在詳細を検討中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究実施計画に挙げた「リゾリン脂質の検出・定量系の確立」、「培養細胞系における検討」及び「肥満糖尿病モデルマウスに対するPPARαリガンド投与実験」の全ての項目において、おおむね当初の予定通りに実験が進行し、各項目において要となる実験結果を既に本年度中に得ることができた。

今後の研究の推進方策

今後は、リゾリン脂質の供給源と考えられる肝臓及び作用組織である脂肪組織双方においてリゾリン脂質の生合成又は作用メカニズムを詳細に検討する。具体的には、肝臓においては、PPARαノックアウトマウスやボスホリパーゼAノックダウンマウス等を用いた実験を行い、リゾリン脂質の合成にはこれらの因子が重要であることを示す。また、脂肪組織においては、インスリン抵抗性を生じた状態でリゾリン脂質を添加することで糖取り込み能が回復する現象の詳細なメカニズムについて解明する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (7件)

  • [学会発表] High efficient analysis for long free fatty acid profile by ultrahigh-performance liquid chromatography-mass spectrometry。2013

    • 著者名/発表者名
      Takahashi H. Suzuki H, Suda K, Yamazaki Y, Takino A, KimY-I, Goto T, Takahashi N, Iijima Y, Aoki K, Shibata D, Kawada T
    • 学会等名
      The 20th International Congress of Nutrition (ICN 2013)
    • 発表場所
      Gradana Congress Centre (Spain)(発表確定)
    • 年月日
      20130900
  • [学会発表] LC-MSによるマウス生体内遊離脂肪酸プロファイル変化解析2013

    • 著者名/発表者名
      高橋春弥, 鈴木秀幸, 須田邦裕, 山崎陽太, 滝野晃將, 金英一, 後藤剛, 飯島陽子, 青木考, 柴田大輔, 高橋信之, 河田照雄
    • 学会等名
      2013年度日本栄養・食糧学会名古屋大会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県)(発表確定)
    • 年月日
      2013-05-25
  • [学会発表] トマト加工・調理条件がオキソ酸生成に与える影響2013

    • 著者名/発表者名
      江口由, 松宮健太郎, 水谷由記子, 高橋春弥, 高橋信之, 河田照雄, 高橋延行, 鈴木達哉, 荒武, 櫻井望, 鈴木秀幸, 柴田大輔, 松村康生
    • 学会等名
      2013年度日本農芸化学会京都大会
    • 発表場所
      東北大学(宮城県)
    • 年月日
      2013-03-26
  • [学会発表] LC-MSによるマウス生体内遊離脂肪酸プロファイル変化解析2013

    • 著者名/発表者名
      山崎陽太 ,高橋春弥, 後藤剛, 高橋信之, 柴田大輔, 河田照雄
    • 学会等名
      2012年度日本農芸化学会関西支部例会(第478講演会)
    • 発表場所
      京都大学(京都府)
    • 年月日
      2013-02-02
  • [学会発表] LC-MSを用いた生体内遊離脂肪酸定量法の確立及び応用2012

    • 著者名/発表者名
      高橋春弥, 鈴木秀幸, 須田邦裕, 山崎陽太, 滝野晃將, 金英一, 後藤剛, 飯島陽子, 青木考, 柴田大輔, 高橋信之, 河田照雄
    • 学会等名
      2012年度日本肥満学会京都大会
    • 発表場所
      ホテルグランビア京都(京都府)
    • 年月日
      2012-10-12
  • [学会発表] クロロフィル構成分子phytol摂取はPPARαを活性化し、肥満に伴う代謝異常症の発生を抑制する2012

    • 著者名/発表者名
      山國加成衣, 安芝英, 後藤剛, 高橋春弥, 永井宏幸, 金英一, 中田理恵子, 井上裕康, 高橋信之, 河田照雄
    • 学会等名
      2012年度日本肥満学会京都大会
    • 発表場所
      ホテルグランビア京都(京都府)
    • 年月日
      2012-10-12
  • [学会発表] Metabolomics approaches for identifying metabolic syndrome protecting metabolites from tomato2012

    • 著者名/発表者名
      Shibata D, Kim Y-I, Takahashi R, Iijima Y, Aoki K, Kawada T
    • 学会等名
      The 9th Solanaceae Conference
    • 発表場所
      University of Neuchatel (Switzerland)
    • 年月日
      2012-08-27

URL: 

公開日: 2014-07-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi