研究実績の概要 |
当該年度は、当初の研究テーマと関連した研究として、前年度に引き続き、新規のNCX阻害薬の開発を目指したハイスループットスクリーニング系の確立に向けた検討を行った。また、前年度よりスタートさせたテーマである「発育期環境要因における概日リズムの影響」について研究を遂行した。前年度までに、昼間の拘束ストレスが不安様行動の増加、ストレス応答ホルモン(コルチコステロン)分泌の増加、脳内モノアミンレベルの上昇を惹起する一方で、夜間のストレスは不安様行動を減少させ、コルチコステロン分泌や脳内のモノアミンレベルに影響を与えないことを明らかとした。当該年度では、脳内c-fos発現解析により、昼間の拘束ストレスが特定の脳部位の神経活動を上昇させるのに対し、夜間のストレスは影響を与えないことを見出した。本結果より、昼間のストレスはコルチコステロン分泌の増加、脳内モノアミンレベルの上昇、特定脳部位の神経活動の増加を介して不安様行動を増加させる可能性を示した。一方で夜間のストレスは、未知のメカニズムで不安様行動を減少させる可能性が考えられた。また、2週間慢性的に夜間拘束ストレスを負荷したマウスも抗不安様行動を示すが、本作用はストレス解放12時間後には消失することを明らかとした。昼、夜間の拘束ストレスはともに、恐怖条件付け試験における学習記憶能を低下させることを示した。このことから、昼、夜間ストレスの作用の違いは不安様行動選択的である可能性が示された。さらに、GABAA受容体作用薬ペントバルビタール誘発睡眠実験により、昼、夜間拘束ストレスはともにGABA神経機能を低下させることを見出し、昼、夜間ストレスの作用の違いにGABA神経系が関与しないことを見出した。以上の研究成果は、Behavioural Brain Research, 284: 103-111, 2015に掲載された。
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