染色体末端間の融合は、染色体末端を保護するテロメア結合タンパク質の欠損や、老化によるテロメアの短小化などが引き起こす現象として知られている。しかしながら、染色体再編成を介して天然に起こる致死的状況を回避した細胞や個体では、テロメアの機能変化以外にも細胞内外の環境に応答した様々な反応が関与しているものと考えられる。本研究は正常なテロメア機能を持った細胞における染色体末端融合の分子機構を分裂酵母を用いて明らかにすることを目的とている。これまでに、染色体末端融合がサブテロメア領域で生じていることを明らかにしている。本年度はテロメアおよびその近傍に重点を置き、致死的状況に直面した細胞のテロメア長あるいはサブテロメア領域などについて解析を行った。致死的状況を導き、染色体末端融合を実験的に再現するアッセイ系としてセントロメア破壊アッセイ系を用いた。その結果、テロメア長の変化は染色体末端融合を誘導した場合でも野生株と変化は見られなかった。従って、染色体末端融合はテロメアの機能が維持されたままで生じているといえる。一方で、染色体末端融合により生き残った細胞は、サブテロメア配列に変化が見られるということを明らかにした。このことは染色体末端間の融合がよく知られているテロメアの短小化だけでなく、染色体末端の不安定化によっても引き起こされることを示している。現在、逆遺伝学的アプローチを用いて染色体末端融合に必要とされる因子の同定を試みている。
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