研究課題/領域番号 |
12J00560
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
多羅間 充輔 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 非線形・非平衡物理学 / アクティブマター |
研究概要 |
本研究課題では、微生物などのように変形を伴って自発的に運動する粒子の運動についての理論研究を、一般的な視点から行っている。本年度は、おもに自発的に自転運動を示す系について研究を行い、得られた結果を論文にまとめ公表した。この研究を進めていくなかで、われわれはこのような自転運動には2種類あることに気がついた。 ひとつは角運動量が定義されるような系であり、もう一方は界面を伝搬する波が結果として自転運動として現れているようなケースである。この2種類の自転運動は、それを示唆するような実験結果もあり、そのような実験とわれわれの理論研究を比べていくことは、自発運動粒子の研究の発展にとって非常に重要である。 また、われわれは流れの中での運動についての研究も行っている。このような系は実験が発展しており、より実験と対比しやすく、系の非平衡性の理解がよりはっきりとしてくると期待される。 さらに、現実の生物により忠実な理論研究の一つとして、カエルの精子をモデル化しその運動を数値的に調べるという研究も、本年度、進めて来た。この研究は、一般的視点から行っている上述の2つの研究課題とは異なり、実際の実験結果に対してその運動を再現し、そこから普遍的な法則性などを導くことが目標である。帰納的な研究だけではなく、このような帰納的な視点からも研究を進めていくことは、対象としている自発運動粒子のダイナミクスをより深く理解する上で非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自発運動を示す粒子の運動の研究に関して、今年度は当初、外力中の運動、自転運動、ノイズのある場合の3種類の系の解析を計画していた。そのうち、前の2つについてはすでに結果がまとまっており、論文に公表した。最後の一つの課題については、完成していないが、一方で次年度に計画していた、ある種のカエルの精子の運動をモデル化し、数値的に解析するという研究課題が、モデルが完成し、数値的にも解析が進んでいる。また、当初計画していなかった、流体中の自己推進粒子の運動に関する研究もすでに始めており、その意味でも計画通り順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、まず当初の計画にはなかったが、昨年度から開始した流れの中での自己推進粒子の運動の解析を遂行し、結果をまとめ公表したい。また、当初の計画にもあった通り、すでに始めている精子の運動の数値的解析もさらにすすめ、結果を公表に向けてまとめていきたい。また、当初本年度の計画に書かれていた、流体中の相互作用のある状況下での運動の解析も初めていきたい。最後に、ノイズのある場合の自己推進粒子の運動の解析は、すでに別のグループが研究を行っており、われわれはどのように行うか再度慎重に検討しなければならない。
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