数値計算の分野においては有限要素法がその精度や汎用性の高さなどから最も頻繁に使用される手法となっているが、大変形する電磁流体現象などの数値解析においては、しばしばメッシュ情報生成プロセスにおいて複雑な処理が求められたり、あるいはメッシュが生成できずに計算が停止してしまうといった問題があった。そこで本研究では、メッシュを用いず、計算点のみで電磁流体現象を数値解析できる手法を開発した。これは物理量の分布を重み付き最小二乗法により近似し、その近似曲面の傾きなどより微分演算子を離散化し、流体および電磁場の微分系の支配方程式を解くことが出来る手法である。流体運動計算に使用する計算点は、初期位置からラグランジュ的に移動させることで流体の変形を計算するが、電磁場の計算を行うためにはその流体の周囲に空気計算点を生成する必要がある。メッシュを用いずに空間中に計算点を自動で配置する汎用的な手法は現在のところ存在しておらず、そこで本稿では流体表面の法線を用いてその周囲に空気計算点を自動生成するアルゴリズムを考案した。本手法の有効性や精度を検証するため、一様電界中に置かれた水滴が大変形する様子を解析した。その結果、本手法により、流体が大変形した場合でも一切の難しい処理や計算停止のリスクを犯すことなく計算が続行できることを確認した。また、電位分布や流体の自由振動の周波数などの理論解と解析結果を比べてみると、非常に精度のよいことが確認できた。また、流体表面の法線を用いた空気計算点自動生成アルゴリズムもうまく働き、流体の周囲に、流体の形状に合わせて空気計算点の層を生成できた。これは電磁場解析を精度よく行うのに適した空気計算点の分布である。以上述べたように、本研究で開発したメッシュレスによる数値解法は精度、汎用性の両面ですぐれており、従来より有限要素法では解析が困難であった問題などに広く使用できるものである。
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