研究課題/領域番号 |
12J00593
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺木 悠人 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | かに星雲 / ジッター放射 |
研究概要 |
本年度はガンマ線バーストの放射機構として私が有力な候補と考えている、相対論的が乱れた電磁場中を走る際の放射"ジッター放射"の厳密なスペクトル計算のためにコードの開発を行うとともに、かに星雲というパルサー星雲でも同じ放射機構が働いている可能性を考えた論文を発表した。 かに星雲は様々な観測機器のキャリブレーションに使われている、いわゆる「標準光源」である。今までは定常天体と考えられてきたが、2009年ごろから100MeV近くのガンマ線に関しては変動しているのではないかという論文が提出され、2011年度には明らかにフレアが起こっている観測結果が発表された。このフレアは一つの天体の変動現象というだけでなく、パルサー星雲の理解、さらには高エネルギー天体や宇宙線の物理に大きな影響を及ぼす。なぜなら標準理論で期待される放射エネルギーの限界値を明らかに越えているからである。これは物理的要請から決まっており、天体固有のものではない。つまりガンマ線バーストにおいても共通の物理が働いている可能性がある。従来のモデルでは100MeV近辺の放射は「シンクロトロン放射」によって放射されると考えられていたが、ジッター放射によりフレアが起こっていれば限界エネルギーを越えた放射を説明できる。このモデルが正しいとすると、ジッター放射に必要な短波長の乱流電磁場を支えるのに必要な粒子数密度が要請される。従来のモデルよりも大きな値を要請するが、逆に電波観測からは大きな粒子数が要請されており、そちらを指示する。このようにパルサー星雲からパルサー磁気圏に制限をかけることができることが意義の一つである。ジッター放射により高エネルギー放射が出ているという可能性が見いだされている天体は超新星残骸や活動銀河核ジェットなどがあり、ガンマ線バーストでジッター放射がメジャーな放射メカニズムである可能性を探るために、このように他の高エネルギー天体の研究から迫るということも重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述したように蟹星雲のフレアについて研究を進めたことによりガンマ線バースト研究は少々ペンディグしてしまっていた。また、私は第一原理的計算により新たな放射スペクトルの計算を行っているのだが、予想よりも計算コストの削減がうまくいかなかったことも遅れが出ている原因である。
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今後の研究の推進方策 |
計算コストの削減については二つの方向から改善を試みる。一つは計算手法の抜本的見直しによるコードの効率化である。これは現在テスト計算を行う所まで進んでいる。また画像計算用プロセッサ(GPU)の利用で計算を速くしようとしていたが、これは動作周波数の低さがボトルネックをなっていた。現在従来のcpuに近い(動作周波数が高い)many coreのプロセッサを研究室に導入することを考えており、これにより計算の高速化が達成されるだろう。物理的観点からは乱流電磁場の発生としてこれまでは無衝突衝撃波を考えていたが、磁気リコネクション領域が有望なのではないかと考えだしている。これについては現在専門家と協力してコードを開発中である。放射のコードと組み合わせることにより全く新しい結果が得られる可能性がある。
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