研究課題
従属栄養植物は、開花期以外は地上に姿を現さないため、分布情報すら明らかではない種が多く、生態学的な研究を行うには困難が伴った。そこで私は、従属栄養植物の精力的な探索と記載分類を地道に行い、詳細な研究を遂行するための土台を作成した。その上で、野外観察から分子生物学的手法に至る様々な手法を駆使し、従属栄養植物の実態に迫る研究を展開してきた。特筆すべき点として、これまで注目されていなかった地上部での適応を含め検討したことが挙げられる。例えば、大半の従属栄養植物は虫媒の植物から起源しているが、それらの生育場所は薄暗い林床であり、ハナバチなどの訪花性見虫の賑わいとは無縁の世界である。このような環境に生育する従属栄養植物は、薄暗い林床で受粉を達成しなければならない。そこで従属栄養植物の送粉様式を調査したところ、多くの種類が昆虫に受粉を頼らずにすむ自動自家受粉を採用していることを明らかにした。こうした自殖の進化は暗い林床で確実に繁殖するのに役立つたと考えられる。しかし、暗い環境に進出可能な見虫を送粉者として利用できれば、林床でも他殖を行うことが可能かもしれない。このような例として、私は、ヤツシロラン節の多くの種が、ショウジョウバエ媒を採用していることを発見した。また従属栄養植物の種子散布様式についても興味深い知見が得られた。そもそも従属栄養植物は、その寄生性ゆえに、胚乳などの養分を持たない非常に小さな種子を作る。そのため、従属栄養性と風による種子散布の間には関連があると考えられてきた。しかしながら暗く風通しの悪い林床では風散布は不適であるため、完全に光合成をやめた従属栄養植物の一部は、液果をつけ、周食動物散布を再獲得していることが明らかになった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Plant Research
巻: 128 ページ: 115–125
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