研究課題
重イオン照射試料の超微小押込み硬さ試験で得られる表面近傍の照射硬化を中性子照射試料の引張試験で得られる照射硬化と直接比較することは従来不可能であった。その障害となっていたのは、押込み硬さ試験で観察される表面から1μm程度の領域での異常な硬化現象(ISE : Indentation Size Effect)である。NixとGaoは、圧子との接触面では拘束された状態で局所的大変形が起こることから、引張試験等で自由表面を持つ試験片が均一に変形するときと比較して、より高密度の転位が接触面近傍に導入されるとして、これを説明した。本研究では、このNix-Gaoモデルを材料構成式に反映させて有限要素法解析を行うことにより、表面硬化現象を計算で再現することに成功した。これにより、重イオン照射後押込み試験による照射硬化と中性子照射後引張試験による照射硬化を直接比較することが可能になった。同じ照射量での照射硬化は重イオン照射の方が中性子照射よりも大きいことが明らかになった。重イオン照射実験の照射硬化を計算で再現するためには、照射量0.76dpaの場合で750MPaの照射硬化を仮定する必要があり、これは中性子照射実験による照射硬化340MPaの2.2倍である。この原因としては、注入イオンが中性子よりも効率的に照射欠陥を生成する過程、及び高損傷速度である重イオン照射では照射欠陥の核生成が促進され結果的に欠陥数密度が増える過程を考えると説明できる。今後の展開として、超微小押込み試験された重イオン照射材における圧痕直下部の歪み分布の実験的測定と、今回の有限要素法解析で得られた歪み分布の比較によるモデルの高精度化を目指すとともに、今回用いた手法について、材料を選ばない普遍的な方法論を確立することを目指す。
(抄録なし)
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Journal of Nuclear Materials
巻: VOL.442 ページ: S341-S345
Plasma and Fusion Research
巻: VOL.8 ページ: 1405166-1-1405166-6