研究概要 |
特別研究員に採用され2年目となる本年度においては、主に血管網構造体の構築のメカニズムの解明と他臓器への血管網の付与に重点をおいて研究活動を行った。まず生体外での生体類似組織の構築技術の発展は、再生医療のみならず創薬産業においても重要である。申請者らは、細胞集積法によって短期間で積層組織を構築し、また緻密かつ広範囲に広がった血管網を有した組織の構築にも成功している。このような背景のもと、生体外での血管形成条件を種々検討したところ、低酸素状態・周辺組織からの液性因子・三次元的な微小環境が重要であることが見出された。さらに作製された構造を透過型電子顕微鏡を用いてより詳細に評価したところ、血管内皮細胞同士の強いジャンクション形成が確認されただけでなく、基底板や小胞体の形成からも生体に非常に類似した構造を有していることが明らかとなった。得られた結果は、国際的にも評価の高い科学雑誌に発表している(Yoshiya Asano, Akihiro Nishiguchi et al., Microscopy, (2014), in press. Akihiro Nishiguchi et al., Biomaterials, (2014), in press.)。また血管網組織の正常および疾患組織との複合化に関しては、構築した血管網を含む組織と膵臓癌および大腸癌由来の細胞を同時に培養することで、腫瘍浸潤モデルに構築に取り組んでいる。本実験結果は、アメリカのバイオマテリアル学会(SFB 2013 annual meeting)において発表を行っており学生賞を受賞している。この他にも本研究成果は8つの国内・国際学会にて発表されており、期待通り研究が進展していることは明らかである。
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