研究概要 |
本年度は, 昨年度に構築した超強結合系における散逸の取り扱いに関して, 理論をより一般化することから始めた. 研究計画を円滑に進める上で, 必須となる研究であったからである. 結果として一般化に成功し, 散逸の問題に関してはほぼ完全な理解にまで達したと言える. 去年度の理論とより一般化した理論は, それぞれ学術雑誌にて発表済みである. その後, 研究実施計画の通り, 金属膜共振器中のGaAs量子井戸を念頭においた超強結合系のレーザー発振の解析に取り組んだ. レーザー発振の条件やレーザー光の特性の解析まで一通り完了しており, 近々論文として学術雑誌に投稿する予定である. ただし, 超伝導回路を想定したレーザー発振については, いまのところ手つかずのままとなっている. 超強結合系を実現しうる新たな実験系に関しては, 今年度に参加した国際会議にてフランスの実験グループと議論を交わし, 有機分子による系が特に可視光から紫外にかけてのレーザー発振に有望であることが判明した. レーザー光の特性を検証するにしても, 可視光領域であるほうが, 既存の装置を用いることができるので有利と言える. また, 研究計画からはやや逸れるが, 半導体微小共振器におけるポラリトンによるスクイーズド光発生に関してフランスの実験グループと共同研究を行い, 学術雑誌にて発表した. スクイーズド光のような非古典光をレーザー発振させるには如何にすればいいかという本研究とも深い繋がりのある研究である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超伝導回路を想定したレーザー発振の解析まではできていないものの, 研究実施計画の通り, 金属膜共振器中のGaAs量子井戸を想定したレーザー発振の解析までは完了した. 新たな物質系の探索に関しても, 有機分子を用いた超強結合系の可能性が見えてきたことから, 探索自体は完了したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
現状において超強結合下におけるレーザー発振の解析の結果, その出力光の量子力学的な性質は, 通常のレーザー発振とそう変わらないという結果が得られている, 得られた結果が本当に実際の系を反映しているのかを, 来年度は詳細に検証する. もし, 通常のレーザー発振と変わらないという結論になれば, いかにすれば量子力学的な特性をもった光をレーザー発振できるのかについて, 改めて解析を行っていく.
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