研究概要 |
各時計遺伝子のプロモーターや,アミノ酸残基の役割を確かめる為には多数の変異体を作成して個体での表現型をみる必要があるが,スループットを挙げるのは簡単ではない.もしある遺伝子をノックアウトしたES細胞に,その遺伝子の変異体を導入し,細胞のまま概日時計を評価する事が出来るようになれば,その表現型のあるもののみを個体作成に回すことで,多数の変異体を一度に解析できるようになる.問題点としては,ES細胞は概日時計を持っておらず,分化誘導をする事ではじめて発生する事が知られている.従って,当該年度私は,この目的達成の為,ES細胞の分化誘導アッセイ系の構築を目指し,1つのプロトコールを作成した.また,この際において,遺伝子ターゲティングのみならず,トランジェントトランスフェクションにて施行できるとすれば更にスループットが上がる事になる為,トランジェントトランスフェクションをしつつ分化誘導を出来るようなアッセイ系を構築した.また当該年度私は,このノックアウトレスキューの為の遺伝子ターゲティングコンストラクトを作成し,エレクトロポレーションによりターゲティングを行い,多数のES細胞株を樹立した.今後はこれらのES細胞を分化誘導した実験やトランスフェクションによる変異体導入の実験を行っていき,時計遺伝子Xの機能を解析していきたいと考えている.またこの時計遺伝子は光の強さを時計に伝える役割をしていると考えられるため,この時計遺伝子をノックアウトしたマウスにおいて,光の強さを変えた環境で飼育した際,どのような反応が見られるかの実験を行った.また,更に細かく光の強さを変えたとき,これらのノックアウトマウスがどのような概日リズムの同調性を示すのかの実験を施行する為,マウスを飼育する際に光の強さを256段階に変化させる事が出来るような装置を開発した.今後はこの装置を用いて,光の強さを変えた時の同調性をみるような実験を行っていく予定である.
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