研究概要 |
核内受容体は様々な代謝変動に応答するリガンド依存的転写因子であり、多くの代謝異常疾患における創薬の標的分子とみなされている。核内受容体の転写機能は、DNAに直接結合することで発揮されると考えられていた(ゲノミック機能)が、近年はDNA結合非依存的な転写制御機能(ノンゲノミック機構)の存在が報告されていた。本研究では、核内受容体ノンゲノミック機構の全容解明と、創薬応用へ向けた低分子リガンドの同定を目的としている。当初の研究計画二年次では、乳がん細胞におけるプロゲステロン受容体(PR)ノンゲノミック機構の分子機構を解明し論文にまとめ、さらに新たな作動薬候補となる低分子リガンドのスクリーニングを予定していた。しかしながら、PR抗体によるChIP効率が低いことが明らかとなり、一年次目の業績報告にて解析標的の転写因子を1)ビタミンD受容体(VDR)とエストロゲン受容体(ER)、および2)Klfファミリーに変更した。本年度はさらにVDRとKIfに焦点を絞り以下の結果を得た。 1)前年度は、ビタミンD3の最終代謝物である1,25-lactoneと類似体合成化合物DLAMがVDRを介して腎線維症を抑制できるとことを、短期間(1週間)に腎線維化を発症する術式の片側尿管結さつ術(UUO)モデルマウスをもちいて明らかとし論文化を進めていた。本年度では、より生理条件化での検証のため、葉酸の単回投与による長期間(3か月)の腎線維症発症モデルマウスを用い、UUOと同様の結果を得ることができ、論文化に至った。また、DLAMによるVDR転写機能の、より詳細な解明を目的とし、DLAM・VDR複合体のX線結晶構造解析を軸として現在論文化を進めている。 2)Klfファミリーは、幹細胞(ESC)において未分化状態の維持に関わっていることが知られている。そこで本研究では、Klfファミリーの中で未分化維持に特に強く関与しているとされるKlf, 2,4, 5に着目し、ESCにおけるChIP-seqを行っていたが、有意なピークは検出できなかった。一方、心臓組織を用いた修飾ピストン(H3K4me2, H3K27me2)のChIP-seqを実施した際には、2~4万程度のピークが得られ、ChIP-qPCRでの確認もできたことから、KlfのChIp公立の低さが決定的な要因と結論づけられた。
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