研究概要 |
申請書類内の研究目的[1]に関しては,漁業者の行動を規制しない,結果として漁獲努力が増加するような海洋保護区の導入は,保護区導入後にも漁獲圧を変化させない場合に比べて,海洋保護区の資源回復効果や,レジームシフトに対する頑健性の改善効果が常に低く抑えられる事を示した。また,レジームシフトを起こしうる(よって複数安定状態が存在する)海洋生態系内においては,理論,実証研究を含む,これまでの数多くの先行研究が示してきたような「sedentary speciesは海洋保護区の回復効果を最も享受しやすい」といった結論とは全く逆の結果を導きだした。この事実は,海洋保護区導入にあたって,複数安定状態の重要性を軽視するべきではないという示唆を与える。以上の結果は現在国際誌へ投稿中である。 また研究目的[2]にあるように,2012年度中にカリフォルニア大学デイビス校Department of Environmental Science&PolicyのMarissa Baskett博士,また同大学のDepartment of Wildlife,Fish&Conservation BiologyのLouis Botsford博士のもとを短期の研究滞在をし,生態学的なプロセスの中に人間の意思決定の要素を組み込んだモデリングに関する共同研究を行った。これは生態系の観測プロセスに掛かかるコストおよび海洋保護区から得られるベネフィットの関係を明らかにするものであり,限られた予算の中でいかに海洋保護区の効果を引き出せるかを議論する事を目的としており,現在,数値シミュレーションを行っている。また同じく研究目的[2]にある,ランダム群集行列を用いたモデリングは,島根大学生物資源科学部の舞木昭彦准教授との共同研究をしており,現在計画通り進行中である。
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