研究課題/領域番号 |
12J00724
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 哲仁 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 金属メッシュ / バイオセンサ / 周期構造 / ラベルフリー |
研究概要 |
(1)動作メカニズムの解明および高感度化の検討 金属メッシュに電磁波を入射すると表面に電場の局在・増強が生じ、その電場内の屈折率変化に応じて透過スペクトルが周波数シフトする。異なる周期構造の金属メッシュの電磁界解析により、細密な構造の場合は電場の局在領域もスケールダウンし狭域化することが明らかとなった。そこで異なるスケールの周期構造を有する金属メッシュを作製し、実験的に感度評価を行った結果、構造の周期を約1/10にしてβ-lactoglobulinの検出感度が約50倍に向上した。 (2)ナノオーダー薄膜の検出 構造を細密化した金属メッシュを用いてサブミクロン厚に成膜したSiO2薄膜の検出を行った。その結果、膜厚に応じて透過特性の系統的な周波数シフトが得られ、10THz(波長30μm)の電磁波で100nm厚以上を有意に検出することができた。これは金属メッシュに用いた動作波長の1/300の厚みに相当し、高感度とされている既存法であるSPR法と同等であった。 (3)メンブレンフィルタを用いた微量物質センシング メンブレンフィルタは疎水性の多孔質構造をもつことからタンパク質の吸着性に優れており、固定基材として広く用いられているおり、テラヘルツ帯の電磁波を透過する性質をもつ。本研究では、メンブレンに固定したプローブ分子による選択的なターゲット検出を行った。ターゲットには皮膚や粘膜を正常に保つ効果を持つ機能性物質として知られているビオチンに着目し、通常の抗原抗体反応よりも親和性の強いアビジン-ビオチン反応を阻害測定法により測定した結果、ビオチン0~1μg/mLの定量評価に成功した。この濃度は、農作物中のビオチンの有無を判定出来るレベルであるが、金属メッシュの最適化により更なる微量検出が期待出来る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電磁界シミュレーションにより得られた解析結果をもとに得られた知見からデバイスの高感度化を実証することができた。また実用段階には及ばないものの、センシング例もすでに実証されており、今後さらに機能向上が期待できることから、現在までの達成度としては順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
金属メッシュの基板表面に抗体を固定することにより、ターゲット選択性をもたせ、同定と定量の両方を可能とするセンサの構築を目指す。まず抗体固定のプロトコルを確立するにあたり、夾雑物存在下でも非特異的吸着による影響を最小化するために、表面のブロッキングについても検討する。ターゲットには細菌やタンパク質を設定し、食品の検査に適用可能な濃度の検出を試みる。また、本研究において用いたフィルタを一体化した金属メッシュを作製することにより電場が強く局在される場所にターゲットを配置することが可能になるため、感度の向上が期待できる。本研究ではフィルター体型金属メッシュの試作ならびに評価を行う予定である。
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