研究課題/領域番号 |
12J00745
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三内 顕義 名古屋大学, 大学院多元数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | コックス環 / K3曲面 / 自己同型 / Frobenius写像 / Abelian・variety / ordinary |
研究概要 |
今年度はK3曲面上のコックス環についての研究を行い、Huybrechtsによる「K3曲面のコックス環の自己同型写像による不変式環は有限生成になるか?」という問いをK3曲面が複素数体上定義されている場合に肯定的に解決した。まずこのK3曲面のコックス環について考えるというのは当初の研究計画の次のステップと考えられる。研究計画ではlog Fano多様体のコックス環の特異点の具合は多様体自身がlogFanoであることを特徴付けるといったものだったが、こと有限生成性においてのみ考えればこれは反標準束の有効性がコックス環の有限生成を導出するということを示唆している。反標準束の有効性が一番弱い場合というのはそれが構造層と一致している時だが、次元1の場合を含め、アーベル多様体においてはそのピカール群が次元を持ち、コックス環をうまく定義することはできない。よって反標準束が自明である一番シンプルな例はK3曲面の場合に他ならない。しかしこの場合も一般にはコックス環は有限生成にならない例が知られており、コックス環がどのような意味において有限性を持つか、ということに関しては何も知られていなかった。そこでコックス環の多様体の自己同型群による不変式環を考えることで有限性の意味を与えたのが今年度の研究である。コックス環の不変式環を考えるというのは今までに存在してなかった種類の研究でああり、その点においてオリジナリティがあるといえる。またその証明の中でカラビヤウ多様体に対する錐予想というもののK3曲面の場合を用いており、錐予想をコックス環に用いるという部分も新しいと思われる。またその他にも、正標数の射影代数多様体上の構造層のFrobenius射によるpush forwardの構造がどのように幾何的構造に影響を与えるかについて研究を行い、被約な射影代数多様体がordinary Abelian varietyとなるための必要十分条件はcanonical bundleが自明かつalbanese写像がseparableであり、さらに構造層のFrobenius射によるpush forwardがline bundleの直和に分解することであるということを証明した(神戸大学の田中氏との共同研究)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画であったlog Fano多様体のコックス環による特徴付けは一般次元において完全解決した。次なる課題として反標準束が自明な多様体上のコックス環について研究中であり、またそれにおいても、Huybrechtsによる「K3曲面のコックス環の自己同型写像による不変式環は有限生成になるか?」という問いを主要な場合であると思われる複素数体上の場合において解決した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向性としては引き続き反標準束が自明な多様体上のコックス環について研究を遂行する、という方向の研究が一つある。またlog Fano多様体のコックス環による特徴付けの時に用いたFrobenius写像の研究を行うという方向性も考えられる。正標数の極小モデル理論はここ数年急激に発展しており、それらに貢献できるような研究を行いたいと思っている。
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