研究課題/領域番号 |
12J00764
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
謝 暁晨 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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キーワード | アンカリング構造転移 / 擬似スメクティックA相の濡れ効果 / 光誘起双安定デバイス / 熱拡散率異方性 / 電場下におけるアンカリング構造転移 / 二光子蛍光顕微鏡 / 3次元分子配向解析 |
研究概要 |
今年度は上記の課題名にて以下の成果を上げました。 (1)電気メモリーデバイスに応用するために、電場下でアンカリング構造転移の挙動を主に明らかにした。主な着眼点は下の二点になります。 1:アンカリング構造転移において双安定領域におきまして水平配向と垂直配向とを電場で非可逆的にスイッチングさせることができた。よって、メモリーデバイスとしての機能を果たし、応用に期待される。 2:物理的に、アンカリング構造転移は電場強度にかかわらず不連続的に水平と垂直配向の間を行き来し、かつ、電場が水平配向と垂直配向のどちらかを安定化させその転移温度を大きく影響することを明らかにした。 (2)キラルネマティック液晶においてもアンカリング構造転移を起こさせることに成功しました。この発見はアンカリング構造転移を利用したレーザー発振の研究及びフォトニクスの応用につながるものだと思います。 (3)申請者らのグループはアンカリング構造転移を利用した双安定デバイスを提案した。原理としてアンカリング構造転移を示す液晶に色素をドープし、アンカリング転移温度に近い温度においてレーザー書き込みを行うことにより照射部分の温度を転移温度高温側へ移行させその部分のみ異なる配向を実現するものである。しかし、光書き込みをするために用いられているレーザー強度が強くなければいけない弱点であった。申請者らは光反応性配向膜としてアゾ系デンドリマー液晶を本系のCYTOP表面に自発的に吸着させることでレーザー光より数百分の一の強度の光でアンカリング構造転移を起こせるようになり、光誘起双安定デバイスとしての性能を向上させることができた。 (4)差走査熱量測定(DSC)及び温度波熱分析法(TWA)により測定を行い、アンカリング構造転移において異常な熱挙動及び大きな熱拡散率異方性を確認することができた。 (5)二光子蛍光顕微鏡を立ち上げ、アンかリング構造転移際の3次元的な分子配向可視化を試みてみた。分解能が低く、まだ定量的にセル深さ方向の分子配向を評価できておりませんが、これからさらなる改善を目指します。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では本研究におけるアンカリング構造転移は、配向膜界面における擬似スメクティックA相の層構造の出現によって誘起されていることを超低角入射X線回折法等により明らかにした。また、この系に対し示差走査熱量測定(DSC)及び温度波熱分析法(TWA)により解析を行い、アンカリング構造転移において異常な熱挙動及び大きな熱拡散率異方性を確認することができた。これらに加え、二光子蛍光顕微鏡を立ち上げ、アンかリング構造転移際の3次元的な分子配向可視化を試みた。二光子蛍光顕微鏡の分解能はまだ良くないので、これを改善しながら分子配向可視化を試みていくことにしている。当初の実験計画とほぼ一致し、おおむね順調に進展しています。
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今後の研究の推進方策 |
次年度におきましては、主に以下の評価を行う。 (i)二光子蛍光顕微鏡の分解能を上げ、サンプル界面及び転傾付近の液晶ダイレクタの3次元空間分布を可視化することを試みる。 (ii)アンカリング構造転移を利用した液晶デバイスの試作やレーザービーム等の外部刺激を与えることにより、安易に熱誘起によるアンカリング構造転移を利用できるデバイスの作製を試みる。
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