研究課題/領域番号 |
12J00766
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂口 真康 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 共生論 / 共生教育 / 南アフリカ共和国 / 人種差別 / Life Orientation / 高等学校 / 質問紙調査 / インタヴュー調査 |
研究概要 |
本研究の目的は、南アフリカ共和国(以下、南ア)における「共生」のための取り組みの分析を通じて、既存の「共生」論の理論的な強化を図ることである。平成25年度に実施した研究においては、本目的を達成するために設定した4つの課題に取り組んだ。はじめに、「共生」論の理論的枠組みの構築と南アの「共生」の取り組みの分析という課題に対しては、先行研究やカリキュラム等の政府文書を用いた文献研究を行った。次に、南ア西ケープ州の高等学校を事例とした南アの「共生教育」の取り組みの分析という課題に対しては、平成25年7月と8月に高等学校3校にて、10年生から12年生までの学習者1,530名(有効回答数1,527票、有効回答率99%)を対象とした質問紙調査ならびにLife Orientation(「多様性の中の結束」という「共生」論と親和性の高い「南ア憲法」の理念の体現を目指した科目)を中心とした63の授業観察を実施した。質問紙調査では、Life Orientationの取り組みを中心とした教育経験が、学習者の人種差別に関する認識や行動とどのように関連しているのかなどを明らかにすることを目的とした。先行研究において学習者の視点に立ったLife Orientationに関する研究が求められているとされる中で、学習者を対象に調査を行った点に本研究の意義と重要性がある。そして最後に、上述した3つの課題に取り組む中で得られた知見をもとにして、「共生」論の理論的強化に取り組んだ。そこでは、平成24年度に実施したインタヴュー調査の分析結果等をもとにして、学習者の内面を「平和」や「調和」などの「美しさ」で満ち溢れさせるための働きかけのみが「共生教育」ではなく、偏見などの「美しくない」内面を抱えながらもそれらを外部に表出しない行動面への働きかけを重視した教育も「共生教育」の一形態としてありうるという知見を導き出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的を達成するための核である課題3(南アフリカ共和国の高等学校を事例とした「共生教育」の実践の分析)に取り組むために、平成25年7月から8月にかけて、西ケープ州の高等学校3校にて、学習者1,530名を対象とした質問紙調査(有効回答数1,527票、有効回答率99%)、学校長1名を対象としたインタヴュー調査ならびにLife Orientationを中心とした63の授業観察を順調に実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成24年度と平成25年度に実施した文献研究ならびにフィールド・ワークの分析結果をもとにして、既存の「共生社会」論ならびに「共生教育」論への理論的なフィードバックを図ることが中心的な課題となる。加えて、これまでのフィールド・ワークで得られた知見をより強固にし、南アフリカ共和国の「共生教育」の実践をより深く考察するために、平成26年7月から8月にかけて西ケープ州の高等学校3校にて、更なるフィールド・ワーク(学習者と教育者を対象とした更なるインタヴュー調査と授業観察)を実施することも課題とする。
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