研究概要 |
2年目の研究計画として掲げた, 開発したデータ解析手法の妥当性の検証, 授乳習慣が人口動態に与える影響の考察, 古人骨試料の分析は, いずれも順調に進んでいる. 前年度に出した測定データとまとめたレビュー内容をもとにして, 本年度は成果の論文化に多くの時間を割いた. その結果, 江戸時代の一橋高校遺跡の古人骨集団では, 開発した離乳年齢を定量的に評価するモデルを適用し, より正確な離乳年齢を求め, これを江戸の都市化の際の人口動態の観点から解釈するという, 本研究全体のモデルケースとなる成果を得ることができた. 次年度も, 同様の方法をさらに他の遺跡にも適用し, 日本に列島における人類の適応をさらに検証する. 歴史人口学において示唆されている江戸時代の遅い離乳年齢を実証的に検討するため, 東京都の一橋高校遺跡(江戸時代前期)より出土した小児93体と成人46体の骨コラーゲンを前年度に同位体分析した. 本年度は, 歴史人口学の知見をレビューし, 得られた結果の解釈を中心に研究を進めた. 成果は国際誌に論文として発表した. 離乳にともなう骨コラーゲンでの窒素同位体比の変化から, 離乳年齢を定量的に復元するモデルを開発した, すでに報告されている39の古人骨集団にこのモデルを適用するメタ研究を行ない, 完新世のあいだヒトの離乳年齢には大きな変化がなかったことを明らかにした. この研究成果は国際誌に論文として発表した. 有珠モシリ遺跡(北海道, 続縄文文化)より出土した小児骨の同位体分析の結果を論文化した.
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき, 入手したサンプルの分析を進めるとともに, 考古学・歴史学・人類学の文脈にそって結果を解釈する, また, 霊長類の離乳年齢復元についても検討を進める.
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