3年目の研究計画として掲げた,授乳習慣と人口動態の観点からの日本列島における人類の適応の考察は,きわめて順調に進んだ.前年度までに出した測定データとまとめた文献の内容をもとにして,本年度は成果の論文化に多くの時間を割いた.また,特筆すべき成果として,同位体分析や元素分析を利用した授乳・離乳習慣復元の研究について,方法論の基礎から将来の方向性までをまとめた総説論文を発表したことが挙げられる. 本年度に実施した研究は以下の通りである.(A) 考古学試料の同位体分析として,由比ヶ浜南遺跡における離乳年齢復元,モヨロ貝塚における食生態復元と離乳年齢復元.(B) 霊長類への応用として,飼育下チンパンジー・オランウータンにおける観察と試料採集,野生チンパンジー・オランウータンの研究に向けた予備調査.(C) 総説論文の執筆.
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