研究概要 |
本研究では小型で三次元空間の任意方向へ動作可能な多自由度振動アクチュエータの開発と, 力覚を提示可能な制御法を提案することで, 三次元方向への非接地力覚提示の実現を目的としている. 本年度は主に昨年度提案した二自由度振動アクチュエータの試作およびその評価を行った. また被験者実験を行い, 振動アクチュエータを用いた力覚提示の有効性を評価した. 以降に詳細を述べる. 提案した二自由度振動アクチュエータの試作機はx軸可動子, y軸可動子, 固定子の3層から構成されており, それぞれリニアスライダとコイルばねにより接続されている. 試作機はx軸とy軸に独立の変位を得ることができるが, 駆動方向に対して可動子として働く部品の数が異なるため, 可動子質量はx軸駆動とy軸駆動で異なる. 作成した試作機を用いて偏加速度駆動実験を行った. X軸, Y軸どちらを駆動した場合においても偏加速度が発生していることが確認でき, 軸間の干渉などは見られず良好に動作した. このとき, 加速度を固定子側に働く反作用に換算すると, X軸駆動では正負それぞれ3.3mls^2,0. 9m/s^2, Y軸駆動ではそれぞれ4.9m/s^2,1. 3m/s^2となる. この正負の加速度ピークの比は, 力覚提示に十分な値であることから, 試作機は力覚提示を行うアクチュエータとして有効であると言える. 提案したアクチュエータを用いて被験者実験を行い, 力覚提示デバイスとしての有効性の検証を行った. 提示方向は前後左右の4方向を5秒間ランダムに与え, 力を感じた方向を答えるという方法で行ったところ, 全体の平均正答率は83%であった. また一元配置による分散分析を行ったところ, 標本の普遍分散は46で, 推定される母平均の片側95%信頼区間の最低値は正答率79%であった. 4方向提示における期待値25%との比較から, 2自由度振動アクチュエータは力覚提示デバイスとして有効に機能していると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度提案した二自由度アクチュエータを試作し, その特性について評価を行った. その結果は有限要素法を用いたものと良好に一致し, 力覚提示に有効な出力が得られることを確認した, また, 二自由度振動アクチュエータを用いた被験者実験を行い, 提案した二自由度アクチュエータが力覚提示デバイスとして有効であることが確認できたことなどから, おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
26年度は, 昨年度に有効性を確認したアクチュエータを用いて, より振動アクチュエータに適した偏加速度駆動の波形検討を進めている予定である. 昨年度までの成果においても80%以上の正答率を得ているが, この正答率をより向上させるための駆動波形の検討について被験者実験と共に進めていく. これにより一層の正答率の向上, デバイスサイズの小型化に繋がると考えられる. また, 三自由度を有するアクチュエータの構造検討も行う予定である, 三自由度化においては磁気的な干渉が今まで以上に問題として顕在化してくると考えられる, この問題については最適化手法を適用し, 干渉が最小となる制御しやすいアクチュエータの実現を目標とする.
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